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プラスA  作者: 於田縫紀
プロローグ 解説役の彼女
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その5 不安しか無い

 生き残りをかけて、か。

 彼女の話に完全に納得できた訳では無い。

 でも確かに僕は百鬼夜行を見たのだ。

 うーん。

 こういう場合は実用になる質問をしておこう。

「万が一そんな存在を見たりした場合はどうすればいいんだ」


「普段は特に気にしないで、ああいるなと思っておけばいいと思います」

 彼女はそうあっさりと言う。

「ただ出方によっては注意が必要な場合もあります。妖怪というのは生活の知恵から生まれた面もあるので、出現そのものが何かの注意信号という場合もありますから」


 言っている意味はわかる。

 例えば夜中に出てくる怖い妖怪。

 夜は危険だから出歩くなという教えが形を取ったものだろう。

 鬼ババアとか足切りが出る場所と時間は治安が悪いから近づくなというように。


「でも具体的にどう判断すべきかはちょっとわからないと思うな。大体そういう未知のものに出会って感じるのは恐怖だろ」

 さっきの百鬼夜行。

 たいして害は無いと彼女は言ったが僕は本能的な恐怖を感じた。


「さっきみたいに直接目で見えたりするのは例外ですから。普通は何となく気配を感じるとか風の音がうるさいなと思う程度なんです。でも、そう思うのなら学内SNSは使っていますか?」

「一応スマホに入れてはあるよ」

 休講のお知らせとか授業の場所変更等がこれで送られてくるそうだから。


「なら何か相談したい事態があったら連絡下さい」

 彼女はそう言ってスマホを取り出した。

 ちなみに学内SNSの友人登録はQRコード読み取り方式。

 なおかつ実名・所属学科も出るタイプ。

 そんな訳でやっと彼女の名前を確認出来た。

 城間亜理寿、薬学部一年か。


「これって名前、城間(しろま)亜理寿ありすさんでいいのかな」

「音読みで城間(じょうま)なんです。これは津々井(つつい)さんでいいんですね。宜しくお願いします」

「ああ。津々井(つつい)文明ふみあき。今後ともよろしく」


 普通に話しているように見せているが内心はドキドキものだ。

 何せ今まで女の子に縁は無かったからな。

 せいぜいクラスメイトと週一回話すくらいで。

 あとコンビニで女性店員の時にちょい話すくらいか。

 僕の家族を除く女性経験なんてそんなものだ。

 百鬼夜行から何となくの流れでこうなってしまったけれど。


「それと取り敢えず色々あると思うので、一応注意はした方がいいと思います。さっきの百鬼夜行で津々井さんがあの存在を観察可能だということは彼らの方も認識したと思いますから」


 なんだと。

「つまりこれからはしょっちゅう妖怪が僕の元に出てくると」

「そこまで出てこないとは思いますけれど、まあ一日に二、三回程度は」


 ちょっとやめてくれ。

 怖いのは苦手だ。

 しかも僕の住まいは廃村内の一軒家。

 色々と怖すぎる。


「うーん、何かお札でも買っていこうか」

「あまり効き目は無いと思います。気休めにはいいですけれど」


 そんなはっきり言わないで欲しい。

 怖くて家に帰れなくなる。

 いっそ泊めてくれと言いたくなる。

 初対面の女の子にそう言える度胸は僕には無いけれど。

 そんな感じで僕の大学生生活は不安たっぷりに始まってしまったのだった。

 強いて言えば城間さんとSNSアカウントの交換が出来たのがいい事だろうか。


 でもぶっちゃけ不安の方が遙かにウェイトは大きかった。

 それに初対面に等しい女の子に今度会ったり話したりするタイミングも難しいし。

 大丈夫なのだろうか、僕の大学生生活は。

 不安しか無い。

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