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プラスA  作者: 於田縫紀
プロローグ 解説役の彼女
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その4 舞台説明

 ここの食堂は第一、第二、第三とあって、それぞれ一階、二階、三階にある。

 そして階数が高い程一般にお値段が高めになる。


 例えば第一食堂のメインは夕食営業でも○○ランチの類い。

 Aランチがあんかけご飯と味噌汁で三百四十円。

 第二食堂はカフェテリア方式。

 おかずと御飯、味噌汁類をそれぞれ好きな量取って大体五百円程度。

 第三食堂はハンバーグステーキ定食とか定食系が主で最低でも六百円超え。

 つまり本日は中レベルの夕食という訳だ。


 僕はご飯大とポテトサラダ、ハンバーグに冷や奴。

 多そうで実はこれでも三百六十円。

 第一食堂のBランチよりお安めのお値段。

 彼女はご飯とコーンクリームスープと鶏照り焼きにサラダとほうれん草。

 まあここでは標準的な感じだ。


 それにしても女子と二人というのはちょっと目立つな。

 何せこの大学女子が少ない。

 そして少ない女子の皆さんはだいたい三人以上で団体行動している。

 まあ僕のクラスの連中の大半は教職取らない派。

 おかげで知り合いがいないのが幸いだ。


「それではいただきましょうか」

 彼女はそう言うと食べ始める。

 ここ本来の目的は夕食なのだが今回は別だ。


「さっきの百鬼夜行みたいな物は何なんだ?」

 そんな訳でずばり聞いてみる。


「その通り百鬼夜行です。深夜でなくとも出られる程度の妖怪で構成しているのでほぼ無害ですけれど。きっと顔見世興行くらいのつもりで出てきたのでは無いかと思います」

 妖怪の顔見世興行か。


「でも妖怪って実在するのか?」

「実在すると言えば実在するし、実在しないと言えば実在しない。そんな存在です」

 何だそれは。

 でも彼女もそれでわかるとは思っていないらしい。

 説明は続く。


「ここで有名な命題をひとつ。『もし今、私たちの知らない遠く離れた地の誰も居ない森で、一本の木が倒れたとします。その際に、その木は“音を出して”倒れたのでしょうか?』」

 この命題は聞いた事がある。

「どっかの牧師さんが出した問題だな。認知されていない物事は存在するかという」


 彼女の表情がほんの少しだけ笑顔になる。

「なら次はもう少しこの大学らしい命題を。シュレディンガーの猫は生きていますか、死んでいますか」


 これは理系ならお馴染みの命題。

 僕は彼女の言いたい事を理解した。

「認知、または観測される事によって実在する存在といいたい訳か」

 彼女は頷く。


「話が早くて助かります。そう、民話の中に出てくるお化け、怪物、妖怪等。または信者の前でだけ起こる奇跡や秘術。

 それらは一般には迷信と言われています。でもそれはそれらの存在を観測出来なかった者が一見科学的な知識で決めつけた一方的な意見に過ぎません。現に見ましたよね、さっきの百鬼夜行」


 確かに見たし見えた。

 でも妖怪が量子論的存在か。

 何かデンマークの首都コペンハーゲン付近で大きなため息が聞こえそうだ。

 まあ怪談につきものの猫の話もあることだしな。


 となるとシュレディンガーの猫系の怪談か。

 生きている、生きていない、生きている、生きていない……

 あああ……! 存在か重なっている!

 うん、我ながらしょうも無い事を考えてしまった。


 一方彼女の説明は続く。

「ここからひと山越えれば民話の宝庫として有名な場所です。当然ほど近いこの付近にも多種多様な妖怪(あやかし)が存在していました。でも現在は過疎化が進み住民がほとんどいない状態です。このままでは忘れられて存在が消えてしまう。そんな妖怪等が自分達の生き残りを賭けて、住民がいなくなった元の居場所から新設された学園都市へと移ってきたわけです」

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