その8 既に外堀は埋設済
「僕のスクーターを改造してあの道を走れるように出来ますかね」
通学用に一番安いスクーターを新品で買って貰ったのだけれど、こういう遊び方が出来るならカブを買っておけば良かった。
親には教習所代も出して貰っているし車も買って貰う予定。
だからこれ以上の無茶は言えない。
「流石にスクーターじゃあの道は無理だと思う。タイヤが小さすぎて段差や坂が危ない。つっかえるかひっくり返る」
確かにそんな気がするな。
残念ながらバイトが出来るようになるまで諦めるか。
しかしそこでイライザ先輩とアンドレアさんが二人ともにやりとした。
「実は一台はここに置いていくつもりなんだ。荷物運びにも使えるからさ」
えっ、本当か?
「ただ条件というかお願いが一つある。こうやって山を走れる場所って実は他にほとんど無い。普通の登山道を走ったら間違いなく登山者の迷惑だし下手すれば捕まる。だから今後私やうちのツーリングクラブのメンバーがここに走りに来た時、コースを貸して欲しい。勿論来るときは事前に連絡するし、私かレアが必ずついてくるようにする。問題のある奴は連れてこないから」
勿論僕としてはかまわないというか大歓迎だ。
でもこの家には僕以外にも住民がいる。
「僕としてはOKというか有り難いくらいです。でも他に住んでいる三人の意見も聞きたいので今晩一晩分待って下さい」
「フフフフフ、文明がそう言うのは予定内だ」
アンドレアさんが妙な口調でそんな台詞を言う。
「美鈴さんには一番最初にお願いして『今住んでいる人全員の許可を貰ったら』で約束済み。亜理寿ちゃんと真理枝にも根回し済みで、亜理寿ちゃんがさっきバイクに乗っているのもその流れだったりする訳だ」
うーん、頼む順番を心得ている模様。
「なら僕は全然問題無いです。ただ時々乗せて貰うと思いますけれど」
「夜はやめておけよ、夜行性の野生動物が多いから事故ると洒落にならない」
「わかりました」
おお、やった!
面白い物が手に入った。
それにこれがあれば何か色々出来そうだぞ。
荷物運びも楽になるだろうし。
「出来れば今回の初心者コースの他に中上級者用、ロックセクションとかぎりぎりの急登とかも作りたいよな」
「その辺はユンボ使ったり魔法使い二人に頼むかしないとな。でもその前に何処がコースにふさわしいか色々検討しないと」
「地形図広げて考えるか」
「そうだな」
摩耶さんのバイクの音が近づいて来た。
「どうでした」
「いいなこれ。もっと乗っていたい感じだ」
摩耶さんも楽しかったようだ。
確かにこれは楽しいよな。
僕もそう思う。
「これ一台は今後もここで使っていいそうです」
「いいなそれ。常設のアトラクションとして使える」
アトラクションって。
「遊園地じゃないんですから」
「似たようなものさ、遊び場だ」
確かにそうかもしれないな。
「そんな訳で摩耶、新コースを作るときは協力宜しく」
アンドレアさんの台詞に摩耶さんはわざとらしく嫌そうな顔をしてみせる。
「仕方無い。その時は嫌々ながら手を貸してやる」
「サンクス」




