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プラスA  作者: 於田縫紀
第24話 亜理寿さんといる場所
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その2 冬が去りそして

 今回の冬休みは僕も亜理寿さんも一応実家に帰った。

 三十日に実家に帰り、二日に戻ってくるパターンで、往復ともに僕の車だ。

 この家から実家のある街まではほぼ五時間ちょうど。

 別にお互いの家族に挨拶するなんて事はなく、それぞれさっと実家に行って戻ってきた感じだった。


 ただ亜理寿さん、実家に帰ると連絡した時は驚かれたそうだ。

 そして実家での母親や父親の亜理寿さんに対する態度がかなり変わったらしい。

 僕から見たら亜理寿さんの方が少し変わったせいではないかと思うのだけれども。

 亜理寿さんの僕に対する態度は、あの告白した日の前も後もあまり変わっていないような気がする。

 でも他の人に対する態度が少し柔らかくなったような気がするのだ。

 それは僕がそう感じるだけだろうか。

 それとも……


 さて、冬は雪の相手と木の相手が主になる。

 平日でも雪が積もっていそうな朝は、トラクターに除雪機をつけてトンネルのある道まで往復して除雪。

 これをやらないと僕の小さい4WD以外は家に来ることが出来なくなる。

 ちなみに摩耶先輩が車で通れず炎魔法で強制除雪なんてすると大変だ。

 次の日の道路がスケートリンク状態になる。

 道幅四メートル両脇は元田んぼという道路がこうなると非常に怖い。

 摩耶先輩や亜理寿さんは魔力で無理矢理車を走らせたりするけれど、


 そして休日はトラクターかミニユンボで田んぼの周りの道やバイク道に入り、出来る範囲を除雪したり整備したりする。

 たまに雪で木が割れたり倒れたりしているので家まで引っ張ってきて薪にする。

 この辺の積雪は最大でも四十センチ程度。

 でも放っておくとやはり色々支障が出るわけだ。


 木については本当は山全体を見て適宜間伐をしたいのだが手が回らない。

 業者に任せる程では無く、薪を確保出来る程度に切り出せればいいのだけれど。

 今のところ倒木扱いにして邪魔な木をこっそり伐採しては薪にしているけれど、その辺も将来的には法律に則した手続きをとりたい。

 今は大学が忙しいからなかなか時間がとれないけれど、春休みあたり役場に相談に行ってみてもいいかもしれないな。

 何せ寒い日の露天風呂は景気よく薪を使うのだ。

 しかも皆さんそういう日に限って露天風呂を楽しんだりするわけで。

 露天風呂廃止なんてしたら皆さんから襲撃されそうな位だ。


 なお小坂井(ウサウサ)先輩はそうやって確保した木のうち手頃な細さのものを椎茸用にストックしている。

 うまく行けば再来年あたりには生えてくるそうだ。

 気の長い話だが、小坂井(ウサウサ)先輩は研修医期間を含めたらあと6~7年ここにいる訳で、そう考えたら確かに実りある作業なのかもしれない。

 まあ僕や亜理寿さんはもっと長く、ずっとここにいるつもりだけれども。


 あとは仮設スケートリンクなんてのも作った。

 これは摩耶先輩と亜理寿さんの魔法の合わせ技だ。

 バイクサーキットの一部の雪を摩耶先輩の魔法で無理矢理解かして水にして、亜理寿さんの魔法で再び凍らすという簡単な作り。

 でもこれが何気に楽しい。

 よく晴れた日で表面が溶けかけだと良く滑っていい感じだ。

 

 あとは登山道をブーツで上り、上でファンスキーを履いてバイク道を滑り降りてくるのもなかなか楽しい。

 ただこれは上るのに結構体力を使う。

 三回もやれば汗だく状態。

 まあそこで皆さん露天風呂に突入したりするのだけれど。

 なお露天風呂は相変わらずメインは女湯だ。

 男性時間帯が無い日もあったりする。

 まあそんな日は真夜中にこっそり入るけれど。


 そんな感じで短い冬の授業期間はあっという間に過ぎ去って、春休みになる。

 この春休みの期間を利用して、亜理寿さんは免許を取りに出かけた。

 合宿免許で一気に取ると言って、事実二十日ちょうどで戻って来た。

 本人曰く、変なのもいたけれど女子は四人部屋だったし特に危ない事も無かったとの事だ。


 そして雪が完全に溶けて地面のぬかるみが乾く三月下旬は卒業式。

 イライザ先輩とか建築クラブの千金先輩は卒業。

 二人とも就職は東京方面だそうだ。

「実際は研修後、何処に配置されるか分からないけれどな」

 これはイライザ先輩。

「まあ、何とかなりますよ、きっと」

 こっちが千金先輩だ。


 フキノトウが集団で顔を出したり、菜の花の黄色が見え始めたりするともう春。

 そして僕らにとって、ここでの2年目が始まる。


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