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プラスA  作者: 於田縫紀
第24話 亜理寿さんといる場所
155/158

その1 あの日の続き

 告白しても実際の生活は何も変わりない。

 ただ色々安心は出来るようになった気がする。

 亜理寿さんと二人なら此処の場所で暮らしていけそうな気がするのだ。


 なおあの言語化阻害の魔法は三十分で終わった。

 経験者によると『予想以上に厳しい魔法』だったそうだ。

「思考にどれだけ言語を使っているのかよくわかったよ。何せ考えようとしても何もまとまらないんだものな。つい本能的に変身して逃げようとしたら、美智流さんと緑ちゃんにボコボコにされるし」

「取り敢えず本能で動いたら抜田をボコっていたのだ。でも覗こうと計画を立てたのは抜田だから正しい行動なのだ」

「でもあの魔法は恐怖でしたね。あんな恐ろしい目にあったのは初めてです」

 美鈴さんもうんうんと頷いていた。

 結果的には因果応報という事らしい。


 とりあえず試験期間も何とか無事通過し、もうすぐ冬休み。

 ただその前に僕はひとつ余分かもしれない準備をしておいた。

 クリスマスのプレゼントである。

 偽装恋人中の会話で出た腕時計、こっそりプレゼント用に注文しておいたのだ。

 つい昨日届いて、今は私の机の中に仕舞ってある。

 もう恋人だからプレゼントを渡しても大丈夫だよな。

 そうは思うけれどこんな経験ないのでもうどきどきものだ。

 亜理寿さん、喜んでくれればいいけれどな。


 さて、24日はこの家に顔なじみの面々でクリスマスパーティだ。

 プレゼント等は無く、ただただ美味しい物を食べて騒ぐだけ。

 残念ながら25日も授業はあるので、二時間位どんちゃんして終わる予定だ。

 そんな訳で当日は授業が終わると共に各々の車でうちの家まで移動。

 移動しきれない分は摩耶さんの大きい車で送迎。

 ケーキを焼いて大量のフライドチキンを作って何故かシメはネコさん手製のラーメンで、更に人によっては露天風呂でシャンペンがぶ飲みなんてやった結果。


 明日まで大学は授業だというのに死屍累々。

 半裸やそれ以上の屍が一階のそこここに転がっていて、雰囲気台無しな状況だ。

 なおこんな状況になるのは目に見えていたので、建築班や僕の友人等男性陣は夕食会終了時点で摩耶さんの車で寮に帰した。

 長尾は帰りたく無さそうな顔をしていたけれど仕方無い。


 まあそんな夜だけれど、それでもクリスマス。

 いや厳密には24日だからイブなのか。

 そんな訳で僕は一度部屋に戻った後、亜理寿さんにSNSでメッセージを送る。

「今、大丈夫?」


 返事はすぐ来た。

「大丈夫です。そちらの部屋に行きましょうか」

「お願い」

 僕は机からプレゼントを取り出す。


 コンコンコン。

「どうぞ」

「失礼します」

 亜理寿さんが入ってきた。

 こういう場合下手に構えたり間が開いたりすると面倒だ。

 だから単刀直入に行かせて貰う事にする。

「メリークリスマス、という事でプレゼント」

 ささっと出して、亜理寿さんに渡す。


「ありがとうございます。実は私も」

 えっ!

 亜理寿さんが何処からともなく大きめのラッピング済み紙袋を取り出す。

「メリークリスマス」

「ありがとう」

 二人で顔を見合わせ、思わず照れ笑いを浮かべてしまう。


「一緒に開けようか」

「そうですね」

 そんな訳で僕の部屋の机代わりのテーブルで、それぞれのプレゼントを開く。


 紙袋に入っていたのはスクーターを使うときにちょうどいい、ちょっと大きめのメッセンジャーバッグだった。

 これは前から欲しかった奴だ。

 大学の教科書や辞書を入れるにもちょうどいい。

「お互いあの時の話を覚えていたんですね」

 そう言えば腕時計の話をした翌日はバッグの話をしたんだった。

 亜理寿さんもあの時の話を覚えていてくれて、用意までしてくれていた訳か。

 そう思うと何だか嬉しい。

 嬉しいだけでは無い。何という感情なのだろう、これは。


「もうひとつあります。そんな訳で文明さん、ちょっと目を瞑っていただけますか」

 何だろう。

 僕は言われた通り目を瞑る。

 肩に亜理寿さんの手が触れた感触がした。

 そして。いい匂いと唇に柔らかい感触が……えっ!


「文明さんがしてくれないので、私から先にしてしまいました」

 そう言って照れ笑いを浮かべる亜理寿さんを、僕は思いきり抱きしめた。


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