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プラスA  作者: 於田縫紀
第24話 亜理寿さんといる場所
154/158

その6 お仕置きの時間

 言ってしまった。

 

 亜理寿さんが一瞬驚いたような表情をしたのがわかった。

 それからちょっと下を向いて、小声で尋ねてくる。

「本気、ですか」

「勿論」


「私って面倒くさいですよ」

「さっきも言ったけれどさ、その辺を含めて好きなんだから仕方無い」

 あ、完全に下を向いてしまった。

 もう少しゆっくり話を進めるべきだっただろうか。

 何処かで話の方向を間違えただろうか。

 急に色々不安になる。

 でも言ってしまったことは仕方無いし、僕がそう思っているのも事実だ。


「本当にいいんですか」

「勿論」

 うーん、失敗したかな。

 でもここからのリカバリーなんてすぐに思い浮かばない。

 僕にはそんな器用さも経験も無いのだ。


「ごめんなさい」

 えっ!!!

「ちょっと今、顔を見せられない状態です」

『ですので、ちょっと私を見ないでくれると助かります』

 声も魔法音声に切り替わった。

 まずかったかな、やっぱり。


「ごめん、何か急に変な事を言ってしまって」

 取り敢えず謝ろうとした僕に魔法音声が早口で反応する。

『違うんです。文明さんのせいじゃないです。私のせいなんです』

 それから口調が少しゆっくりになって。

『文明さんは悪くないんです。だから訂正しないでください。お願いです。ちゃんと返事をしますから、少しだけ私を見ないで待っていて下さい』


 僕は落ち着かないまま、それでもそれを出さないようにしつつ、待つ。

 喉が渇いた感じがしたのでカップに残った紅茶を飲む。

 何か喉を通ったような気がしないのは気のせいか。

 そして。


『確認します。本当にこんな私でいいんですね』

「勿論」

「わかりました」

 ちょっと涙声、だけれど魔法音声でなく肉声に変わった。

「すみません。これからも宜しくお願いします」

 えっ。


 でも此処で聞き返すのはまずいよな。

 ここはさらっと行こう。

「こちらこそ、これからもよろしく」


 ん! 大事なこの場面だが、僕は何か関係無い別のものを感じた。

 具体的に言うと他人の気配だ。

 なかなかに最悪なのだがある意味ちょうどいい。

 この緊張感たまらない状況を一気に変えよう!

 紅茶の砂糖用に置いてあるティースプーンを何気なく右手で持って、投擲!


「あっ!」

 リビングとキッチンの境の壁際から声がした。

 やはりいたな、真理枝さん。

「もう、危ないじゃないの」


「亜理寿さん、他にもいると思います」

『わかりました』

 亜理寿さんは魔法音声ながらいつもの口調で答える。

 同時に何か一瞬、凶悪な気配が回りに広がる」

「うっ!」

「あっ!」

「あちっ!」

「!!!」

 思った以上の反応があった。


『素直に出てきて下さい。次は電圧を倍にします』

「美智流さん以上に厳しいな」

「私は一度止めましたけれど」

「同罪なのだ諦めるのだ」

「……」

 美鈴さんはともかく、車で去った筈の美智流先輩、深川先輩、抜田先輩まで。

 全員覗いていた訳か!!!


 これはもう、仕方無いな。

「亜理寿さん、やっておしまいなさい」

「ええ」

「ちょっと待つのだ! 話せばわか……ほげ?」

 えっ。深川先輩の台詞が途中でおかしくなったぞ。


「罰として言語化阻害の魔法をかけさせていただきます。効果が持続している間は、何か考えようと思っても言語化出来ず思考が出来なくなります」

 それはなかなか強烈な魔法だな。

 あっ、抜田先輩が狸変化して逃げようとしている。

 でも美智流先輩に捕まった。

 思考が言語化出来なくてもそれくらいは出来るんだな。

 思わず感心してみていると……


「さて、これで邪魔は入らないのでもう一度言います。文明さん、これからもよろしくお願いします」

「こちらこそ、これからもどうぞよろしく」

 よし、これでお互い何とか言えたな。

 でもこの人?達の始末はどうしようか。

 言語化して思考出来なくても反射神経的な動きは出来るみたいで、妖怪大戦争みたいになりつつあるけれど。

「言語化出来ないので大した術は使えないとおもいます。暫く放っておきましょう」

 そうですか、はい。

 こんな面白そうなシーン、抜田秋良君や真理枝さん、深川緑さんが放っておく訳ないじゃないですか。

というお話です。

 次回からはエピローグになります。

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