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プラスA  作者: 於田縫紀
プロローグ 解説役の彼女
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その1 出会い

 何処から説明すればいいのかはよくわからない。

 物語の一部は僕が生まれる前から始まっていたのだから。

 でも取り敢えずは彼女の事から話してみようと思う。

 それが僕にとって時系列的に一番自然でわかりやすいからだ。


 ◇◇◇


 僕は彼女を高校時代から知っていた。

 知っていると言っても当時は名前はおろか話した事も無い。

 ただ制服で近所の公立女子校の生徒だと知っていただけだ。

 ただ通学ルートが近いせいか僕は彼女をよく見かけた。

 行き帰りの電車で、駅ビル内の本屋で、同じく駅ビルのファストフード店で。


 特に見た目が変わっているという訳では無い。

 いや、よく見ると美人だとは思う。

 顔はかなり整っている方だ。

 でも僕が彼女を意識するようになったのは彼女の持つ雰囲気だった。

 凜としていて、それで何処か周囲か浮いた感じ。

 どこか孤高というか他の女子と何か違う雰囲気。

 実際彼女は常に単独行動で群れているところを見た事が無い。

  

 もう一度言うが当時は話をした事も無いし話しかけた事も無い。

 ただ本屋などで見かけると、ああ今日もいるなと思う。

 高校生だった時の僕にとって彼女はそんな存在だった。

 状況が変わったのは高校を卒業し、大学へ入学した後だ。


 僕が大学を決めた理由は簡単、共通試験の失敗だ。

 高校時代もう少し英語を勉強しておけば良かった。

 他の科目は正直自信があるのだが、英語だけは今一つ二つくらい自信が無い。

 英語以外なら九割以上取れる自信があるし実際取った。

 しかし英語の点数はやっと六割超えという程度しか無理だった。


 こうなると受験する大学を色々考えなければならない。

 何せ文系理系どこでも英語は必須なのだ。

 強いて言えば私立文系で英国数のうち二科目で受験可能な学校もある。

 でも僕自身は理系だし親が国公立でないと金を出さないと言っている。

 特に父親がそういう意見だ。


 そんな訳で国立を二校受験。

 一校は第一志望でもう一校は滑り止め。

 そして第一志望は見事不合格。

 そんな訳でここ、国立大学法人美山医科理科大学に入学が決定した。

 国立と言っても割と新しい大学だ。


 ただ出来て数年にしては評判はいいらしい。

 就職実績も悪くない模様。

 でも立地がど田舎なので人気はまあそこそこ程度。

 だから僕の英語でも何とかひっかかった訳だ。

 その代わり付近には研究機関と研究機関関連の団地、寮だけ。

 それ以外は過疎完了した元集落しか無い。

 鉄道すら走っていなくてバスのみという場所だ。


 ただ僕の父がこの近辺出身だったので住む場所はあった。

 十年前父の母が亡くなるまで住んでいた一軒家だ。

 なお近所づきあいとかは考えないでいい。

 過疎で近所が集落ごと全滅しているから。


 そんな訳で何とか入ったこの大学で、僕は彼女と再会した。

 四限の授業を終えてキャンパス内を歩いていた時だ。

 別の校舎から出てきた彼女とすれ違った。

 あああの彼女だとすぐにわかった。

 制服は着ていないが雰囲気がそのままだったから。


 あの人も此処に入学したのかな。

 医や工や理は女子少ないから薬学部あたりかな。

 そんな事を思って彼女を見てしまう。

 ふとこっちを向いた彼女と目があってしまった。

 ちょっと気まずいかな。

 何せ知り合いという訳で無いし。

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