かぶりネコと中の人
吾輩は猫である。名前はまだない。いや、宿主は吾輩のことを「ネコさん」と呼ぶ。
どこで生まれたか全く見当がつかないが、気がついたら見晴らしの良いところにいた。大層居心地の良いそこに、かれこれ30年居座っている。
先日目出度く尻尾が3本になった。
吾輩も立派な化け猫だ。
目標の尻尾の数は8本だ。縁起が良いからな。
日々技を磨いてきたおかげで、吾輩のテクニックはかなりのレベルにまで達していると自負している。
人は吾輩を吾輩と認識しない。ほとんど誰も吾輩を猫だと気付かない。
吾輩を猫と気付く者など、それこそ宿主の家族くらいだろう。その点だけが非常に不本意なのだが。
……いやいや、いまだ若輩の身である何よりの証拠。いよいよ切磋琢磨して宿主の家族も気づかぬほどの立派な化けっぷりを披露すべきであろう。
それはともかく、吾輩の宿主のことを、人は一般に「猫かぶり」と呼ぶ。
見晴らしの良いところ=宿主の頭の上、ということで。
ネコさんはかなりでかいです。宿主がすっぽり入ります。