第11話 秋子の記憶
秋子は、また夢をみていた。
それは、私が小学生ぐらいの時だ。
私は苛められていた。
「ばーか。」「秋子はばかだよな、下等動物じゃねか。」
男子からそう呼ばれていた。
病気や怪我ばかりして入院していたせいで、ぜんぜん勉強について
いけなかった。
いつも、テストで悪い点ばかりとっていた。
「死ねよ、そんな頭悪い人と友達になりたくない。」
女子からも、そう言われた。
学校に行くのは苦痛だった。
親も共働きで家にあまりいなかった。
いつも一人だった。
唯一、入院しているときは、看護師さんや周りに人がいたので
淋しさはなかったが、注射や点滴、痛みに耐える日々だった。
もういいや、苦しまなくて。
もういいや、この世に未練はないの、さようなら。
気がついたらここは病院の屋上。
飛び降りたのは、私。
私から飛び降りたの。
「ぬほほほほ…うっ、苦しい、痛い、悲しい、淋しい、なんでだ!こんな苦しい記憶は初めてじゃ…。爺なんとかしてくれ…。助けて。」
老人があわてて苦しがるバクに水をもってきた。
「ああ、人間は楽しいことばかりしていると思っていたのに、この小娘の記憶は
なんじゃ!苦くてまずい。」
バクは、苦しい顔をしてもがいていた。ローラと雀の子は顔を見合わせた。
それから数時間…。秋子は目を覚ました。
老人は、「お目覚めですか、秋子様。悪夢にうなされていたようですがどうですか?」秋子はすっきりした様子で
「どうかした?なにがあったの。」
バクは、その後苦しさのあまり寝込んでしまったそうだ。
デルノコの茸は、怪我の苦しみを初めて知ったバクが、
「苦しみから救ってくれ。」と自分の体験から森の怪我をした動物たちにわけることを許可されることになった。
秋子はお屋敷を出ると、きつねに戻っていた。
ローラと雀の子は
「茸を持って、雪じいと大王のところに行くけどどうする?」
秋子は、「行くよ。」と二人について行った。