第10話 大きなお屋敷の中で
目の前に、大きな西洋のお屋敷が見えてきた。
「えっ!ここは何?」あまりに大きな建物に秋子は驚いた。
ローラさんは、「この経路図見て、1、2、3階と地下二階に部屋があるのよ。」と屋敷の中の地図をみせてくれた。秋子は
驚きを隠せないまま、大きな門の前に降ろされた。
3人が大きなドアについていた呼び鈴を鳴らすと、
「いらっしゃいませ」と一人のメイドさんが、あらわれて、
大きなドアが開き、大きな庭に通された。
すると、すぐにどこからともなく、タクシードの男性が二人で現われた。
二人は息をそろえて、また大きなお屋敷の扉を開き、
「ようこそお客様」と言った。
扉の向こうは、広いロビーになっていた。豪華なシャンデリアから
こぼれそうなくらい装飾がされていた。
奥に階段があり、レッドカーペットがひかれ、手すりが黄金色に輝いていた。
なぜか、制服姿の秋子は場違いな気がして恥ずかしくなった。
「場違いではございませんよ。お客様。」突然、一人の老人に話かけられた。
「服を見て、生きているときどういうご身分がすぐわかります。」
秋子はどういう意味だろう…と考えた。
「どうぞ、こちらに。」
そこには、大きなキングサイズのベットが置いてあった。
「お父様!」雀の子がなぜか私の後ろに隠れた。
「いらっしゃい、お主が秋子というおなごじゃな。わしはバクじゃ。」
老人の隣には、とても大きな白黒の化け物が現われた。
秋子は、その化け物に言った。
「お願いがあります。この森の動物たちにあの貴重な茸を安い値段でわけてください。」びくびくしながら、化け物バクに話した。
「おお、いいだろう。そのかわりお主の生きていた頃の記憶をわしゃ全部いただくよ。いいかね?」
秋子は、迷いもせず、「いいわ、それでケガをした動物たちが元気になるなら
私の生きていたころの記憶なんてくれてやるわ!」
ローラは、「本当にいいの?私も昔人間だったの。でも、このバクと取引をして楽しかったことも嬉しかったことも何も思い出せないの。どうしてこの森に来たのかもわからず、今はこの森のみんなのために働いているの。本当にいいのね、後悔しないのね。」そう耳打ちで話した。
「いいわ、私には嬉しかったこと、楽しかったことなんて思い出せないし、もういいの。人間だった記憶あんたにくれてやるわよ!この化け物に!」
老人も、雀の子も驚いた顔で秋子をみつめた。
バクは「ぬほほほほ…。これで美味しい人間の記憶が食べられるぞ。」
老人は、「秋子殿、覚悟はいいですか?そうしたら、このベットにお休みください。」そう言われて秋子はキングサイズのベットに寝転んだ。
「ぬほほほほ…。学生の甘い人間の記憶美味しそう。ぬほほほほ」
バクは不気味な笑いをしていた。