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プロローグ

「君のはじまりと終わりに降る雨」

~プロローグ~

「どうしても行くんだな?」


 何度このセリフを聞いたことだろう。自分でもわかっている。こんな行動に意味がないことも。いや、意味はあるのかもしれない。けれど何も生み出さない。いや生み出すものは『後悔』という二文字だけかもしれない。

 けれど、俺はこのまま何もせずに、何も知らなかったふりをしつづけることなんてできない。

 そう、あの時俺はあの手の、そうつながれていたあの手の意味を、関係をもっと知るべきだった。『アレ』が意味していたことを。

 だから進むんだ。自分勝手なのもわかっている。どれだけ多くの人に迷惑をかけるのかもわかっている。

 大きく息を吸い込んで、何度も、何度も何人にも言ってきたセリフを言う。

「ああ、どうしても行きたいんだ。行った先に待っているものが絶望しかなかったとしても」

 わかっている。希望を選ぶのならここにいれば一番だ。

 友達もいる。家族もいる。けれど、ここには『紗枝』がいない。だからもう一度出会いたいんだ。

 あの手のぬくもりの意味とそしてあの日と、あの涙のわけを。

 もう、手遅れだってことはわかっている。けれどすべてに決着をつけないといけない。


「わかったよ。応援しておくよ。お前が常識の範囲内でうごくのならな」


 そう言って送り出してくれた。ああ、わかっている。これはもう常識の範囲内じゃないのかもしれないことだということも。だって、もう俺とあいつ、そう『紗枝』とをつなぐものなんて何一つ残っていないのだから。いや、唯一残っているつながりと言えば一つだけなのかもしれない。

 だからこそ、この未来には何も生み出さないのだ。ただ、救いだったのが旅立ちの日が雨でなく晴れていたことだけだった。雨だったなら俺はまたあの日のことを思い出しただろうから。


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