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新米勇者の気苦労

 このあたりに出るモンスターは弱いとの話だし、たとえ俺程度の実力でも、これだけ仲間がいればなんとかなるだろう。


「ぐおっ」


 なんとか……


「ぐあっ!」


 なんとか……


「スラー」


 なんとか……


 いつの間にか、俺以外の味方は倒されていた。


「お前ら弱すぎるだろ!その装備はハリボテか!」


「二日酔いで……」


「飲みすぎた……」


「スラ………」


「どいつもこいつも使えねえなちくしょー!」


 まさかの二日酔いで、戦闘に支障をきたすことになろうとは。

 かくなる上は……


「離脱‼︎」


「てめ、逃げんな!」


「それでも勇者か!」


「勝ち目のない勝負なさんざするか!モンスターの生贄となりやがれ!あ、金は預かってくわ」


「それ二度と帰ってこないだろ!」


「ハレちゃん!行くよ!」


「どこにですか〜⁉︎」


「とりあえずモンスターが来ないところへ!」


 レイさんは物理的ダメージは食らわないようなので、そのままスイスイついてきた。

 あとのさんび……三人は、まあ、なんとか来るだろう。

 最初の戦闘の結果は『逃げるが勝ち』ってことで。

 あんな二日酔いをかばいながら、戦えなんて、どこのパーティ探してもないだろう。せめて、酔いを覚ましてから行くんだった。

 いや、気づくだろうって言われても、酒場にいる時は普通だったし。


「はぁはぁ。疲れました〜」


「ごめんな。走らせちゃって」


「みなさん、大丈夫でしょうか?」


「…………!」


「来たみたいですよ」


「……………!」


 まだ、遠いのか声がイマイチ届いて来ない。


「なんか、後ろから来てませんか?」


「いや、ここまで来たのにそれは……」


「「「うおおおお!」」」


 来やがった。

 モンスターを引き連れて。

 そんなに走れる元気があるなら戦ってこいよ。

 せめて倒してから追ってこいよ。


「勇者!てめえだけ逃げるとはふてえ野郎だ!」


「一蓮托生!旅は道連れ!」


「一緒に倒すスラ!」


「お前らだけでやってこいよ!こっち巻き込むな!」


「うおっと、ハレちゃんにレイさんを巻き込むわけにはいかんな。ちょい、ローグだけこい」


「ざけんなあああぁぁぁぁ………」


「敵陣に投げられて行きましたね」


「勇者だから、なんとかなるだろう」


 のんきな声とは裏腹に俺は一気に窮地に立たされていた。

 おかしい、こんなことは許されない。

 誰に?って、基本俺にだが。


「ぐるるる」


 ついでに襲って来たのは犬型のモンスター。ここで出てくる時点でそんなに強くない上、サイズも小型であるのだが、あのバカどもは揃いも揃って何をしていたんだ。


「グルアア!」


「うおら!」


 数は、向こうは3匹いるようだが、とりあえず、襲いかかって来た1匹目の顔面に剣を一発叩き込む。

 意外にも効いているみたく、眉間にシワが寄ってるようにも……見えなくもあったりなかったり。


「いいぞー!」


「それでこそ勇者だー!」


「がんばるスラー!」


「てめえら後で覚えとけよ⁉︎」


 後ろからやる気のない声援を受けて、剣を構え直す。

 まあ、あいつらがハレちゃんたち守ってくれるならそれに越したことはないが……


「本当に……役立たずだな!あの酔っ払いども!」


 一斉に襲って来たらキツイが、幸い1匹は今の一撃で弱っているようなので、動きが鈍くなっている。

 俺はそれを集中的に叩いた。

 一匹が倒れたのをみて、それがボスだったのか、他の二匹は逃げ出して行った。


「はあ〜。勝ったか……」


「すごいすごい!」


 そう言って、ハレちゃんは俺に飛びついて来た。

 いや、あの君装備とかつけてないから色々当たってる。


「スケベ」


「エロ勇者」


「エロの権化」


「なんでそこまで言われなきゃいけねえんだよ!てめえら並べ!特にスライム!」


「なんで僕スラ⁉︎」


「かっ飛ばしたらさぞ、気持ちいいだろうな〜」


「や、やめるスラ。今からでもまだ遅くないスラ」


「ユウ、ザック。よろしく」


「「おう」」


 二人で、スラキンを持ち上げる。

 よし、全員横並びになったな。

 俺は、鞘に入れたままの剣を振り上げる。


「てめえらいっぺん飛んでけ‼︎」


「「「なんでだーーー………」」」


「ふう、スッキリ」


「ろ、ローグさん……」


「あ、ああ。ごめん、怖がらせちゃったか?」


「大の大人二人を吹っ飛ばす力があって、どうして落ちこぼれ判定なんですか?」


「……あれは、ギャグだから、吹っ飛ばした描写見えて、実は二三メートル先に転がってるだけだから」


「そういうことですか」


 納得されてしまった。

 だが、スラキンだけはまた投げられたらしく行方不明となった。

 あいつよく行方不明になるな。

 ただ、真っ先に殴られたユウと、それに巻き込まれて倒れたザックは、ぐったりしている。


 パッパッラパッパパッパー


「なんだ?この効果音」


「レベルアップしたようです」


「ゲームじゃないんだが……」


 ローグはレベルが上がった!

 攻撃力1アップ

 体力3アップ

 素早さ4アップ

 危機回避能力10アップ

 キレやすさ5アップ

 演出力3アップ


「なんか、いくつかいるのかいらんのか分からん能力が上がってるな……」


「キレやすいのは直したいですね」


「基本的にあいつらのせいだけど」


「まだあるみたいです」


 恋愛力7アップ


「俺はどこかの恋愛シュミレーションゲームの主人公かよ……いるのか?このパラメータ。てか、どうやって上がんだよこんなの」


「女の子となにかアクションを起こしてレベルが上がるとステータスも上がっていきます」


 引っ張り回してた記憶しかないけど、そういうのでも上がるものなのか。それ以前に旅に必要なものではないと思う。


「ローグさんにハレのこと任せてたいんですけど」


「俺に任せられても困りますよ」


「こんなに可愛いのに」


 レイさんに撫でられて、顔をほころばせている。

 仲のいいことはいいことであるのだが、疑問がある。


「レイさん。こっちからそっちへは触れれないんじゃないんでした?」


「ですが、こっちから一方的に触ることは出来ます。ですから、触られてる感覚があっても、触ってる感覚はないんです」


 不可逆ということか。

 待て、それすごく便利じゃん。


「じゃあ、武器とか持てます?」


「残念ながら、無機質のものには透過するだけのようですね」


「なんだ……」


「まあ、ガッカリしないでください。役立つ時はいつか来ますよ」


「うん……ハレちゃんよりは期待してる」


「私にも期待してください!」


「だから、君はまず戦えるだけの用意を整えてください」


「う〜私、何をしたらいいんですか?」


「レイさんは数えないとして、少なくとも護衛できる奴は……ゴメン、俺しかいないわ」


「「俺らを選択肢から外すな‼︎」」


 ノビていた二人だが、ようやく復活した模様。だが、スラキンは相変わらず何処かに行ったままだ。


「先ほど、戦わずに逃げて来たのはどこのどいつだ」


「「真っ先に逃げたやつに言われたくねえ」」


「うるせえ!最終的には俺が倒しただろうが!」


「奥さん、どうします?このワガママな子」


「それはあれですよ。あれするんですよ」


「あれですね?」


 あれってなんだ。具体的なことは何一つとして明らかになってないぞ。


「空中ブランコ〜」


「説明しよう。空中ブランコとは、二人で一人の四肢を持って、ブランコの要領で振り回すことだ」


「ダメですー!ローグさんいじめないでくださいー‼︎」


「ちっ、ハレちゃんが言うならやめとくか」


「ハレちゃんに感謝しろ」


 なんで、こいつらこんな高慢なの?役立たずだったのはお前らの方だよ?


「ありがと、ハレちゃん」


「だって、守ってくれたのはローグさんだけですから。ローグさんのピンチは私が助けます」


 そう言って、少しだけ主張をしている胸を張る。

 ただ、どうにもハレちゃんが俺だけに懐いてるようにも見えなくもないが、何故だろうか。

 やっぱ、年が離れてる大人と人外とでは、頼り方が分からないのもあるかもしれない。


「ハアハア……ようやく、帰って来れたスラ……」


「じゃ、先に進もうか」


「はい♪」


 明るく返事をして、ハレちゃんは戻ってきたスラキンを抱いて歩き出した。

 大の大人はぶーたら文句垂れてたが、文句を垂れる前にその実力を発揮してから言ってもらいたい。

 次こそは活躍してくれることを祈ろう。

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