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旅の目的

 勇者、村娘、盗賊、遊び人、幽霊、スライムという、謎のパーティというか、パーティとも呼べるのかよく分からんものを組んで、フィールドを歩いていた。

 流石に、ハレちゃん以外はそれなりに装備を持っているようで、見た目的にはまだマシなのかもしれない。


「絵面的にスライムが勇者パーティに加わってるのはいかがもんかね?」


 スラキンをつまみ上げて、睨みをきかせているのは、盗賊のザック。

 この状況だけ見てるとただのチンピラだということは口を塞いでおく。


「バカにしてるスラな?僕の実力を見てるスラ」


「おう、見せてみろよ」


 なんか決闘でも始めるのか?

 素直に降ろすザックもザックだが、たかがスライムだと思っているのだろう。


「来い!我が仲間たちよ!」


「仲間〜?スライムが束になろうが蹴散らしてやるぜ!」


 それ、負けフラグ……と言おうと思ったが、言ってしまったものは取り消しは効かないし、なんかどこからか、鳴き声が聞こえる。


「スラスラ〜」


「へっ、お仲間の登場か……って、へ?」


 およそ、50はくだらないだろう、スライムの大群が押し寄せてきた。


「ハレちゃん、危ないからこっちいような」


「は、はい」


 スライムの大群のために、ザックへの通り道を開いてやる。


「へっ!スライムが集まろうが所詮スライム……のわー‼︎」


 スライムの大群に押し寄せられ、いくつかの火柱が上がっていた。

 スライムでも使える初級魔法だろうが、ああも数がいたらキツイだろうな(他人事)。


「だ、大丈夫でしょうか?」


「多分大丈夫だろ。なんだかんだタフっぽいし」


「もういいスラー」


「スラスラ〜」


 あれだけいたスライムの大群が、瞬く間に姿を消した。


「俺たちは一体、何を見たんだ?」


「さあ?」


 ユウが唖然としていたが、俺は自分に害がなかったために、なんか水色の塊がたくさん押し寄せて、嵐のように去って行ったという感想しかない。

 その、標的となったザックは、煙を吐いて、くたばっていた。


「勝者、スラちゃん」


 レイさんが、声をあげて、コールしていた。

 舐めてかかったザックが悪い。


「てめぇ!1対1でやりやがれ!」


「誰もそんなルールつけてないスラ〜」


「はいはい、そこまで。ザックも相手がスライムだと思ってなめてたんだろ?」


「うっ……今度は覚えてろ!」


「まるで敵役のようだ」


「仲間だよ!」


「ねえねえ、ローグさん。本当にこのメンバーで魔王を討伐するんですか?」


「まあ、入れ替えとかきくなら、もっと戦力になりそうなの引っ張るけど」


「その場合誰が、戦力外なんですか?」


 俺は、ハレちゃんを見た。


「なんで私なんですかー⁉︎上から直々に命じられてついて来てるのにー!」


「まあ、冗談だ。そうだな……」


 よくよく考えたら、一番弱いのって、ハレちゃん除いたら俺じゃね?って結論に至ったので、このままでは俺が戦力外通告をされかねないので、話をそらすことにする。


「魔王討伐と言ったわけだが、他にもやることはある。みんな集まって」


 にらめっこしていた、スラキンとザックをユウに引っ張って来てもらう。のちのち、面倒なことにならんといいけど……杞憂だろうな。どう見ても、ほとんどがギャグ要因というのはいささか魔王を討伐するためのパーティとしては問題があるような気がしなくもないが、まあ、俺が魔王を倒すことなんて誰も期待しちゃいないだろう。急造仕立てで、勇者にしてもらったようなもんだし。

 待てよ?


「ハレちゃん、俺がどうやって勇者になったか知ってる?」


「え?まあ、あの街の人には言うなって言われましたけど、君は勇者の仲間となるから知っておきなさいって」


「そ、そうか……」


「なんだ?勇者様よ。後ろめたいことでもあるのか?」


「隠し事は良くないスラー」


「まあ、別に俺としては隠すようなことじゃないから言っておくよ。勇者になるためには勇者の育成学校に行くことは知ってるよな?そこで、勇者となるための力が認められた人が勇者として旅に出るわけだけど」


「賄賂を使ったのか?」


「偉い人を闇討ちにしたとか?」


「その娘さんを人質にとったとか?」



「人聞き悪いな!お前ら!」


「茶化さないでちゃんと聞いてあげましょうよ〜」


「ありがとう。俺の味方はハレちゃんぐらいだよ」


「私は弱い人の味方です!」


 俺が弱い人だと認定されてない?


「それはともかく、そのために試験を受けるんだが、それは一発勝負」


「そこで不正をしたと」


「してねぇつってんだろ!人の話を聞け!」


「では、続きをどうぞ」


「不正ってか、俺の時だけ不手際があったんだよ。それを向こう側が隠そうとしてな、急遽、俺を勇者として仕立て上げることにしたんだと」


「本当は今年の勇者さんは0人の予定だったそうです」


「勇者の実力に見合う人がいなかった……と」


「俺は万年E判定で、いわゆる落ちこぼれだった。まあ、不正は俺じゃなくて向こう側って話だ」


「やり直せばよかったじゃん」


「俺もそう言ったんだが、俺だけ特別扱いして、そういうわけにはいかなかったらしい。元々、一回限りの試験だから、やり直しとかもないんだと。だから、わざわざ極秘裏に合格ということにされた」


「なるほど、要するに勇者としてはヘボということだな」


「遠回りしたというのに、簡略化してくれてありがとう」


「礼なんていらねえぜ」


「いらねえ世話だって言ってるんだよ!」


「なんと」


 驚かれてることに驚きだよ。今の自分の発言のどこに気遣いなんてものが存在してると思ったんだ。


「で、最終目的が魔王討伐として、目先の目標も決めてかねえと、すぐ手詰まりになるぜ」


「あー、じゃあ、まずはハレちゃんになんか防具買ってあげよう」


「……………」


「……………」


「……………」


「……………」


「どうして、みんなしてかわいそうな子を見る目で見るんですかー!スラちゃんだって、防具なんてないじゃないですか!」


「進化すれば、王冠がつくスラ。それに、モンスターは生まれ落ちてから、すでにいろんなものに耐性がついているものスラ」


「モンスターってなんかズルいですー。それにあそこの人はなんで旅立つ時にこれしかくれなかったんですかー」


 これと言って振り回しているのは、杖っぽいなにか。一応、杖なのだろう。薬草しか作れないこの子にどんな用途があるのか知らないけど。


「どう使うかわかってないようですね?これは、薬草をすりつぶす時に使うんですよ」


「ハレ……それ、一応、魔法使いや僧侶といった職業の人が使うれっきとした武器よ?」


「そ、そうだったんですかー⁉︎」


「と、とりあえず、次の街を目指して、それまではハレちゃん守りながら戦うこと。異論はないね?」


「私、ある一定のモンスターとしか戦えないですよ?」


「まあ、それなら出た時に頼むとして、あとは…ハレちゃんのお守りでもしててください」


「子供扱いしないでくださいー!ローグさんと同じ年ですよー!」


「なんか、出て来そうだぜ?」


「じゃあ、戦える奴らは用意して……全員男かよ」


「色気ねえなぁ」


「ま、女の子に無理はさせちゃいけないぜ」


「仲間呼ぶスラ?」


「「それはいい」」


  スラキンの言葉に全員で否定して、各々武器を構えた。

 それにしても、俺も実戦は初めてだな。

 なんとか見よう見まねでやってみるか。

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