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勇者誕生(2)

 一旦自室へと戻り、俺は荷物をまとめていた。終わったものは去る運命だ。一応、がんばってきた功績はある。

 入学時にもらった今は、ちょうど扱いやすくなった剣。

 入学したばっかりの時はひたすら長くて、振り回すこともままならなかった。

 こいつと10年一緒にやってきた。まあ、すでに折れてしまって実践では使い物にならないけど。勲章として持って帰らせてもらうとしよう。

 三十分もすれば、部屋は綺麗に片付いた。元々一人部屋だ。言うほど置けるものもないのが幸いし、すぐに終わった。

 そして、俺は呼ばれてたので本部へと向かうことにする。


 ーーーーーーーーーーーーー


 厳かな雰囲気に包まれて、重役と思われる人が五人ほど座っていた。なんだか、ただならぬ事態のようにも感じられる。俺、何かしたかな?


「受験番号507番。ローグ・アーケン。間違いはないか?」


 俺は首を縦に振り、その問いに返事をする。何が始まるのだろうか。


「喜ぶがいい。君は今年の合格者だ」


「………はい?」


 今、なんと?


「本来ならば今年は合格者はなしの予定だったのだが、アクシデントが発生した」


 先ほどの担当から継いで、1番偉そうな人が次の言葉を告げる。


「君が試験で戦ったモンスターだが、手違いで試験用のモンスターではなかったのだ。だが、君だけ再試験というのは他の受験者に申し訳ない。いずれバレるかもしれんが、君を勇者として立てることにより、ことの収束としたい」


「あの……なら、僕も落とせばよかったんじゃ……」


「君だけ強さの違うモンスターと戦っていたのだ。もしかしたら、通常のモンスターと戦っていたら合格していたかもしれない。だが、再試験は出来ない。それに、君にとっても悪い話ではないと思うが?」


「要するに、口封じの代わりに僕を勇者にするということですか?」


「そうだ。勇者として旅立つ用意はこちらでしよう。質問はあるかな?」


「あの、本当に外に出ても大丈夫でしょうか?」


「なに、気にするでない。試験でそれなりの力を見極めていたつもりだ。旅の仲間となる人材を一緒に集めておこう。三日後、街の門に明朝にいてくれ。誰かに聞かれても故郷帰ると言っておいてくれ」


「分かりました」


 何だか、突拍子もない話だったが、なぜか俺が勇者として働くことが出来ることとなった。

 えっ?俺でいいの?

 でも、まあ、向こうの決定だし、勇者になれるのなら、俺はそれをありがたく受け入れよう。

 三日後が楽しみだ。

 自室へと戻る足は少し弾んでいた。


 ーーーーーーーーーーーーー


 三日後


「装備は気に入ってもらえたかな?」


 俺は、後日、郵送されてきた装備に身を包んでいた。いかにも勇者って感じで、中々にカッコいい。


「で、あと仲間っていうのは……」


「ああ。一人はもうそろそろくるはずだが……」


「す、すいませーん!遅れましたー」


「来たようだな」


 来たには来た。

 だが、見た目は普通の女の子だ。


「誰ですかこの子?」


「君の仲間となる、ハレ・エアフルトだ」


「よ、よろしくです!」


 うん。仲間となるのは別に構わない。女の子であることに不満があるわけではない。


「えっと、この子はなにが出来るんですか?」


「何も出来ないが?」


「え?」


「聞こえなかったか?何も出来ない」


「なんで連れて来たんですか⁉︎」


「失礼な!薬を調合するぐらいは出来ますよ!」


「ああ、そうなんだ。ビックリしたよ」


「薬草程度ですが」


 一気に不安になった。薬草って、1番レベル低いじゃん。


「可愛らしい子だろう。では、旅のご加護があらんことを」


「待て待て待て」


「まだ何か?」


「あるに決まってんだろ!まだいるんだろ?他に仲間となる連中が」


「後は、近隣の街にある酒場で募ってくれ。勇者と言っておくだけでそれなりの人は集まるだろう」


「この子と二人だけで行けってか⁉︎」


「大丈夫だ。近隣の街はここから1日もすればたどり着く。それぐらいは大丈夫だ。薬草があれば、多少怪我しても回復できるだろう。では、もういいな?GOOD LUCK‼︎」


 勝手に幸運を祈られて、どこかへ去ってしまった。

 てか、無駄に速い。今から追いかけたところで無駄足だろう。

 とりあえず、俺は旅の仲間となる一人の女の子に目を向ける。


「えと、ハレちゃんって言ったっけ?俺は、ローグ・アーケン。ローグって呼んでくれ」


「は、はい。よろしくお願いします!」


 元気は良いんだけど……。なんで、この子が寄越されたのか。

 装備……というか、服装はその辺の一般市民。いわば、村人レベル。おおよそ、旅でモンスターと戦うための服装ではない。


「えっと、ハレちゃん。君はそれで戦えるの?」


「へ?いや、一昨日に連絡が来たんですけど『新しい勇者の仲間となって欲しい。なに、君が戦うことはない。全ては、新勇者が守ってくれるだろう』って」


 なんて、大ボラ吹かれてんの?実力を見極めたって、全くなにも見極めてないだろ。俺の実力は万年E判定だって言ってんだろ?向こうも、一応それぐらいのデータ揃ってんだろ?

 いや……


「クソッ!君の実力に合わせた仲間を用意するってそういうことか‼︎」


「な、なんです?どうしたんですか?」


「いや、ハレちゃんは何も悪くない……ところで、君はいくつ?」


「156cmです」


「普通この場面で聴くのは背じゃなくて年なんだけど」


「15です」


「すごいな。何事もなかったかのように、間髪入れずに質問に答えたね」


「すごいですか?もっと褒めてもらって構いませんよ?」


「そして、調子に乗るのも早いな……」


 なんか変なの摑まされた気分だけど、仲間がいるだけ文句は言えない。その上、装備も用意してもらっている。

 ただ、この装備がハリボテでないことを祈るばかりだ。

 ギャグ漫画ばりに、どこかで地雷踏んで吹っ飛ばされて、次の回には何事もなかったかのように、復活してるとかもゴメンだ。

 どうなるのだろうかこの旅。


「今からものすごく不安だ……」


「ところで、この旅は、一体何を目標とするのですか?」


「一応、名目的には魔王討伐となっているが……長年倒されてない魔王を俺たちが倒すっていうのも現実味に欠けるな」


「私、戦力になりますよ〜」


「薬草ぐらいしか作れない子が戦力になるか!」


「うぐっ……料理だって出来ますよ〜」


 それ以前にこの子が、15になるまでに何をしていたのかを問い詰めたいところだが、あんまり時間が過ぎるとこの辺りも人が集まる。それまでには出ないといけない。そのために、わざわざ明朝を指定されたのだ。

 もうそろそろ、日も完全に昇り始める。


「とりあえず、今からの当面の目的は仲間を集めること。このままじゃ、その辺のスライムにも倒されるぞ」


「勇者さんがですか?」


「君がだよ!せめて、マシな防具とかないのか!」


「だ、だって〜全部守ってくれるって言うから〜」


「なら、せめて魔法耐性があるとかそういうのにしようよ……」


「そんなの高くてとても買えないです。それに動きやすいですよ?これ」


 なんというか……ヒラヒラした格好なんだが、彼女が動きやすいと言うなら止めることもあるまい。丈が長くて、足で引っ掛けるってこともなさそうだし。


「まあ……仲間が揃うまではモンスターにエンカウントしても逃げることしようか」


 幸先不安な旅のスタートだった。

 こんなんで、旅が出来るのか……。


 next→酒場へ

第二話です。増えた仲間は一人。きっと、この先も増える仲間はボンクラですね。勇者がボンクラですからw

仲間となったハレが何をしていたのかは、そのうち話に入れます。

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