79 ”hithterlya”
俺は今、馬鹿でかいカナタ邸の廊下を箒で掃いている。
別にそれは構わない。
宿泊代みたいなもんだ。
だが、一つ、どうしても納得できないことがある。
「…あははっ! もう、エイダさんったら!」
リビングから楽しげな笑い声が聞こえてくる。
俺は一人でパシられ、奴らは馬鹿でかいテレビでゲームをしながら菓子を頬張っている。
「解せぬっ!」
なんなんだ、この扱いの差は?
俺は不平不満と一緒に、塵芥を丁寧に吹き飛ばしていった。
「そんなに怒らないで下さいよぅ」
「怒ってない」
「じゃあまたパシろっと」
「怒ってはいないが、不満は言うぞ。
仲間外れにすんなよ、寂しいだろ」
「…お兄様」
カナタがふと真面目な顔をする。
「その言葉は、心からの言葉ですか?」
「突然どうした?」
カナタの意図がわからない。
「まあ、ちょっと冗談っぽい言い方だけど、仲間外れにされたら寂しいのは本当だ。
当然だろ?」
わからないので正直に答える。
「…それじゃあ、カナタ達のこと、どう思ってるんです?」
ますますわからない。
「カナタはお兄様のこと、好きな気がします。
性的な意味で無く、人間として。
まだ始めて会ってからちょっとしか経ってないけど、それでも何となくお兄様のことは、好きな気がします。
まだはっきりとは言えないけど。
…でも、時々、なんかお兄様のことが怖く思えてしまって、カナタはよくわからなくなるんです。
お兄様のことが、時々、凄くよくわからない。
だから…」
がしっと上から胸倉を掴まれる。
そんなつもりはないんだろうけど、結構な恐怖体験だ。
「正直なことを答えてとは言いません。
…カナタを、安心させて下さい。
お願いします」
わからないのは、俺もなんだがな。
「怖いと思うなら、俺から離れりゃいいのに」
「それで文句を言ってきたのは誰ですか?」
「うっ…俺だな」
「それに、折角お兄様のこと好き…な気がするのに、離れたくなんて無いです。
…さっきは、その、ごめんなさいとしか、言えませんが。
…お兄様が怖いまま、明日を迎えたくないんです。
だって、明日は…だから」
「お前らのことは、愛してる。
って言えば、安心か?」
「えっと」
「俺だったら安心できねぇな。
捻くれてるから、俺」
カナタが座っているソファの隣に座る。
「今日は俺について俺自身がたっぷりと講釈を垂れてやる。
怖いなんて二度と思えなくなるような情けない俺の軌跡を、嫌になるまで伝え聞かせてやる。
だから、お前のこともその後で教えてくれ」
「キョー、今、エイダ達、仲間外れ」
「京之介さんの情けない話し、私も是非聞きたいです!」
後ろからひょっこりと、エイダと千梨が出てきた。
カナタが笑う。
釣られて、俺も笑う。
「はいはい。
あんま面白くないからな。
期待すんなよ。
えっとだな、まず、俺の生まれはだな…あれ?」
突然、視界がブラックアウトした。
それから少しして、周囲から音が全く聞こえないことに気がついた。




