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スタティオン  作者: quklop
”fautht” 若かりしあの頃の彼女と冷たい鉄格子
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74"muoenthtorealr"

俺に任された役は、警備隊員が戻ってくる前にアジトの中から二人を見つけ出し無事を伝えた後、最低限の荷物を持って奴らが戻ってくる前に脱出する、ただそれだけの簡単な役だ。

…簡単、か?


俺は土足のままアジトの中の居住区画まで入りこむ。

「おい」

まずい。

扉の裏に隊員が隠れていた。

そりゃそうか、あれだけ人数がいれば何人かはアジトに残すという選択肢もある。

迂闊だったな。


「ここで何をしている。

答えられなければ斬るぞ」

「ああ、えっと、そのだな」

悪いが手段を選んでいる暇はない。

「こういうことをしに来た」

先手必勝の定理によって、見事俺の拳は彼の顎を捉える。

「ふげヴォッ!」


なんだか最近理不尽な暴力で事態を解決する癖がついてしまったような気がする。

悪い癖だな。

俺はちゃんと殴る前に話し合いが出来る論理派だった筈だ。

どうしてこうなってしまった。


「おにい、ちゃん?」

どこからかくぐもった由紀之の声がした。

こっちの騒ぎが聞こえたのだろう。


…懐かしいな。

昔は由紀之が髪のことで苛められるたびに俺はイライラしてそいつを殴った。

そういう時決まって由紀之はどこかへ隠れてその様子を見ているのだ。

事が終わると泣き顔で出てくる。

それで、いつも持ち歩いている自分用の絆創膏を、俺が殴った奴の傷口に貼り付ける。

自分を苛めたやつに、だ。

それを見ていると、なぜだか俺の中でまたイライラが増幅していく。

そうして暫く俺は由紀之と口をきかなくなるのだ。

あの頃の俺はどうしようもない馬鹿だった。

まあ、今も大概だが。


「ああそうだ。

久しぶりだな、我が妹よ」

あ、でも今では嫁か。

その間違いに気がつくと、何故だか自然と顔がにやけてしまった。


ぺりぺりと壁が端の方から剥がれていき、そこからやっぱり泣き顔の由紀之が顔を出した。

そりゃ見つからないわけだ。

何時の間にこんな仕掛けを作ったのだろう?


由紀之の方へ手を伸ばした時、ヒュッと風を裂くような音が耳に飛び込んだ。

あいつ、気絶してなかったのか。

殆ど勘で振り向き様に裏拳を放つ。

ガインッ!

拳に硬い感触が伝わった。

横から殴られた刀は、当然砕ける。

だというのに、彼は柄だけになった刀を呆然と見つめたかと思うと、何が可笑しいのか突然笑い出した。

「は、はは…は。

ば、バケモンだ!?

うひゅうウェあああっ!?

死ネイッ!!」


狂ったような動作で、男が飛び掛ってくる。

だが、俺は彼が放った言葉の方に衝撃を受けていた。

バケモン。


…体の奥の方から、正体不明の熱が湧き上がってくる。

気がついた時には、俺は男の首を左手で押さえつけて地面に磔にしていた。

俺は何も考えずに右手を振り上げる。

そして一直線に、

「やめてっ!」

振り下ろすことは出来なかった。

由紀之が俺にしがみついている。

左手を離すと、男はビクンと一度跳ねてそれきり動かなくなった。


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