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スタティオン  作者: quklop
”fautht” 若かりしあの頃の彼女と冷たい鉄格子
93/120

73"thzuqui"

鈴木がスーツのボタンを千切り、シャツやネクタイを乱し、更に念入りにスラックスの膝の部分を破る。

いかにも不良か何かに襲われたばかりです、といった感じに。

「それでは、打ち合わせ通りにお願いしますよ。

はい、本番五秒前。

四。

三。

二。

…」


鈴木が警備隊員達から見える位置に飛び出して、例のポーズで例の言葉を叫ぶ。

「もうだめだあぁー!!」

数秒間、警備隊員全員の動きが止まる。

しかしすぐに、その場で一番の下っ端と思われる男性隊員が鈴木の方に寄越されて、その後は何事も無かったかのように捜索が再開された。

これだけじゃだめだ。


「どうされましたか?」

「…その、お、襲われて、さ、ささ、財布を、盗まれてしまって」

なかなかの演技派だ。

ぷるぷると震える足が、世の無情さを物語っている。


「安心してください、必ずや我々桂木警備隊が貴方の財布を取り返します。

それで、犯人の特徴を教えていただきたいのですが…」

「おっ、おお…」

「お?」

すうっと息を吸い込んで、ここに居る全員に届く程度の、しかし不自然ではない声量で鈴木が言う。

「女の子、二人組み、でした…」

「!?」

水を打ったように辺りが静まりかえる。


警備隊全員が、鈴木の方を向いていた。

怒号を飛ばしていた現場の監督役と思われる人物が、鈴木の方に足早に近づき突然質問を投げかける。

「おい、そいつらの背丈はどれくらいだ?」

まずい。

俺が知る限りではまだ鈴木は由紀之のことを知らない。

警備隊員間の会話から、カナタ以外の少女の存在を推測しているだけだ。

この様子では警備隊員達は一度以上由紀之とカナタの姿を見ている。

ここで矛盾が生じてしまうと全てが泡になる。


俺はぎりぎりで鈴木にだけ姿を見られる位置まで移動する。

「えっと……ひ、一人は、大体このくらいで」

鈴木が、大体カナタの身長に合わせた位置まで、手を地面から水平にして上げる。

「…もう一人は」

俺は鈴木がしたのと同じようにして、大体の由紀之の身長を示す。

「えっと、そ、その」

鈴木は監督の方を向いたままだ。

頼む、気が付いてくれ。


「どうした、早く言え」

苛立たしげな声音で、監督役が催促をかける。

一体どうすれば…。

その時、俺の視界の隅に黒い毛玉生物が映りこんだ。

これしかない!

「ふにゃ~お」

この時程、俺の声変わりしたのかどうかすら怪しい声質に感謝を覚えた瞬間は無いだろう。

俺は猫の鳴きまねをした。

鈴木の注意がこっちに向く。


「あ、そうです、このくらいの」

鈴木は俺の頭より少し下を指した。

「やっぱりそうか。

おい、そいつらは何処に行った?」

「こっちです」

鈴木がアジトとは反対方向を指差すのと同時に、俺はドラム缶の影に再び身を隠す。

「クソッ、やられたか!

行くぞ、お前ら!!」

「「「「「「「「「イエッサー!!」」」」」」」」」

ダッダッダッダッダッ。

まるで軍隊行軍のような調子で、警備隊員達は走り去っていった。


「さて、それでは後は頼みましたよ。

彼等はそのうち戻ってきてしまうでしょうから、くれぐれもお急ぎ下さい」

そう言い残して、鈴木は影の中へと溶けた。


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