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スタティオン  作者: quklop
”fautht” 若かりしあの頃の彼女と冷たい鉄格子
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71 "auotua"

驚き、恐怖、嫌悪。

恐らくこの場において俺が持つべきこれらの正常な感情のうちのどれでもなく、俺の中にはただただ梅雨の時期の雨雲のようなどんよりとした感情が広がった。


「本当に、殺したのか?」

自分の背筋が凍る程冷たい声だった。

「うん、殺したさ」

「どうして?」

「だから、ちょっと加減を間違えたって言ったじゃないか」

「そうか」


「……君も、僕から逃げるかい?」

きっと日高が殺しをしたことを知って、エイダ達を含めた他の紅玉の会のメンバーはこの会から逃げていったのだろう。

当然か。

俺だって、例え組織を裏切ったからだとしても、ちょっと加減を間違えられて殺されてしまうような組織には居たくない。


「いいよ。

今の僕はさぞかし怖いだろう?

僕も怖い。

こんなことをしておいて、未だに現実と夢に違いが見出せない僕はとても恐ろしい。

僕だって、僕から逃げてしまいたいくらいさ。

ほら、怖いだろう?」

違う。

「怖いわけじゃない。

ただ、なんつうかな。

残念だ。

うんざりしている。

お前の言うとおり、これは夢みたいなもんなんだと俺も思うけれど、だからこそそんな夢の中で人が死ぬところは見たくなかった。

もっと言えば俺の知ってる奴が一応でも知ってる奴を殺すなんて最悪だ。

お前といれば、楽しい夢が見られると思ったんだがな…」


泣いているような笑っているような変な表情のままで、日高は俺に小さく手を振った。

「…期待に応えられなくて、悪いね。

さよなら、京ちゃん」

けど、と日高が言葉を続ける。

「僕は僕で、今の政府を倒す理由がある。

一人になったって、僕は止まらないよ。

僕は僕のやりかたでやらせてもらう。

もしかしたら、明日にでもまた、向こうで君と出会うかもしれないね。

だから…君に応えられなかった僕にこんなことを言う資格は無いかも知れないけれど、言わせて貰うよ。

また、会おう」


日高が手を振るのを止めて項垂れる。

その姿はべらべらと良く喋る口なんかよりも、余程多くのことを語っていた。


俺は後ろを振り向きかけて、ふと気が付く。

「おい、日高。

最後に教えろ、佐上はどうした?」

「…君達と居るはずじゃあなかったっけ?」

日高の話の中で、佐上という名前は一度も耳にしていない。

勿論俺も佐上を見ていない。


…とりあえず次の目標は決まったな。

「ねえ、僕からも最後にいいかい?」

「本当に良く喋るなお前は」

「青田智弘…青タイツの彼の名前だよ。

彼は両手両足の爪を全部剥がされても、そこをライターで炙られても裏切った理由を言わないどころか、声一つあげなかった。

彼曰く、それは美しくないんだってさ。

そうして彼は死んでいった」

「それを俺に言って、今更どうなるってんだよ」

「どうにもならないよ。

それじゃあね」

まるでなんてこと無いような声を合図に、俺は踵を返した。

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