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3 ”ohuotkau”
「その疑問、全てお答え致しましょう」
!?
突然、至近距離からボソボソと何事かを囁かれた。
「誰だ!?」
反射的に後ろを振り返る。
すると…
「…電車じゃ、ない?」
いつの間にかそこには、ガタガタと揺れる車両の代わりに、ベンチやら自動販売機やら売店やらが置かれていた。
左を振り向くと、窪んだ穴の中に線路が敷かれているのが見える。
さらに、その穴を挟んだ向こう側には『行政地獄』と書かれた看板が吊るされていた。
これはアレだ。
何をどう考えてもこれは駅というやつだ。
「いいえ、スタティオンです」
「ひゃぉうっ!」
変な声が出た。
それも仕方がないだろう。
声が聞こえた途端、目と鼻の先にはシルクハットを被った大男が仁王立ちをしていたのだから。
三メートルは余裕で超えていそうだ。
「便利でしょう?
取り敢えず乗ってしまえば、後は自動的に貴方に最適なスタティオンで降ろしてくれるのです」
三メートル上から声が俺の方に降り注いでくる。
しかし、大男の話し方がやたら丁寧だったせいか、俺は急速に落ち着きを取り戻した。