66 ”yhaiyoyhaiyom-thckniutvy”
「しかし、よく一人で外に出られたな」
必死の思いで二人の誤解、でもなかったようだが、兎に角二人を無理やりに説き伏せて、なんとか平和な状態を保った俺は、より精神的にダメージを受けていそうな由紀乃のケアに努めていた。
「……えらい?」
「ああ、えらいぞ、由紀乃」
あまりのショックで幼児退行を起こしているのだろう。
由紀乃が俺の知らない男と、怯える様子もなく抱き合っている様を想像する。
俺の場合は、幼児退行どころかその場でショック死しかねない。
「頭撫でて。
あの女が見てる目の前で」
ああ、それが狙いか。
繊細なのやら逞しいのやら。
「あ、でも撫でる前に手を洗って」
どうやらカナタは由紀乃にすっかり嫌われてしまったようだ。
だが、由紀乃が人に対して恐怖の前に嫌悪感を覚えるのは本当に珍しい。
イヤヨイヤヨモナントヤラ。
存外相性は良いのかもしれない。
由紀乃には、まだ全部は説明していない。
訳あって家に住めなくなって、その代わりに友人の家に泊めてもらっているということになっている。
もちろんその友人が紅玉の会の代表であることは伏せて。
あながち間違いではない。
「で、なんでついて来たんだ?」
「帰るって言ってから、いつもと反対方向に歩いて行ったから」
「ああ、しまった」
「また変なことに首突っ込んでるのはなんとなくわかってたから、その、なんか、手伝えないかなって」
「初めての共同作業ってわけか」
「茶化してる?」
「茶化してない。
嬉しいよ、わざわざこんなとこまで来てくれてさ」
「こんなところで悪かったですねぇ」
カナタがお盆にチャーハンを三つ載せてリビングにやってきた。
カナタの方は流石と言うべきか、由紀乃に対してはもう嫌悪感は抱いていないようだった。
曰く、普通の顔してるとちっちゃくて可愛い。




