61 ”tuou-daugxs”
結婚について、東街家の親達は快く承諾してくれた。
曰く、京之介君なら安心、だそうだ。
結婚について話す最中も、由紀乃は俺にベッタリだったもんで、なんだか俺の方が申し訳なくなってしまった。
「京之介君、これを持っていくといい」
玄関前で父親に呼び止められた。
そうだった。
アルビノの由紀乃は日光に弱い。
ちゃんと俺に傘を持たせてくるあたり、ちゃんとこの人も父親してるんだな。
「それじゃあ、気を付けて行ってきてくれ。
我が娘と、そして息子よ」
「ははっ。
行ってくるよ、オヤジ」
「い、行って、きま、…」
母親が、いつも通りの無言と無表情で、手を振ってくれた。
それから俺たちは、奇異の目で見られつつも、なんとか役所に辿り着いた。
歩ける距離にあって良かった。
「なあ、オヤジさんや奥さんのこと、まだ怖いか?」
「…怖い」
「なんで?」
「……人間だから」
こりゃ思ってたよりも重症だ。
「じゃ、俺は人間じゃないのか」
「あんたは、犬」
「…わん。
それじゃ、中に入るぞ」
「待って!」
「どした?」
益々強く由紀乃がしがみつく。
「…怖いから、その、頭撫でてほしい」
「あいよ。
道具を磨くのは、持ち主の役目だからな」
由紀乃の髪は、エイダや千梨のそれとは違って、とてもフワフワとしていた。
中に入って、いきなり怒号を耳にした。
「ふざけんな!
んな事までお前らに決められてたまるかっ!!」
受付の人に、大柄な男が吠えていた。
由紀乃が悲鳴をあげる。
俺は慌てて由紀乃の耳を塞いだ。
「だ、大丈夫だ由紀乃。
そうだ、あれは犬だ。
よく吠える大型犬。
人間じゃねぇぞ、だから大丈夫」
「いぬ、こわい!」
由紀乃が崩れ落ちる。
犬は大丈夫なんじゃなかったのか?
大型だからか?
……悪かったな、小型で。
「犬じゃねぇよ!」
やばい、聞かれてた。
よく見ると結構怖い顔してるな。
「でも涼くん、そういうプレイ大好きだよね!」
大型犬…涼くんとやらの彼女さんと思われる巨乳のお姉さんが茶々を入れる。
成る程、いい趣味だ。
俺の涼くんに対する恐怖心が吹き飛んだ。
「同志よ…」
つい手を差し出して握手を求めてしまう。
なぜなら、俺たちは同志だからだ。
「ち、ちげーよ!
べ、別にそんなの好きじゃねぇし!
変態じゃねぇしっ!」
「あー、大変趣味は合いそうでよろしいんだが…」
何がよろしいんだか。
「ちょっと声のボリューム抑えてくんないかな。
こいつが怖がる」
そうしてようやく、二人は俺の足にしがみつく白いモコモコの存在に気がついた。
「あ、悪い」




