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スタティオン  作者: quklop
”fautht” 若かりしあの頃の彼女と冷たい鉄格子
79/120

59 ”haundgo”


「えっと、結婚するんだから、あれよね」

「結婚式については…」

「お役所に結婚届出さなきゃ」

「そっちか」

って、待てよ。

「結婚届って、二人で持ってかなきゃいけないんじゃなかったっけ?」

少なくとも俺が知っている常識では、夫婦揃って提出しなければいけない。

「そうね」

「そうねって…。

外、出られるのかよ、お前?

そういうことしなくたって、考えではどうにかなるようにしてあるんだが」

由紀乃は一切外に出なくていい。

ただちょっとだけ、パソコンを操作してくれればこの作戦は終わりだ。


「そういうこと…したいの」

「怖く、ないのか?

外に出るのは」

「怖いわ」

「なら、どうして?」

「怖い。

怖いけど……。

…引きこもりっていうのも、案外楽じゃないの。

パソコンはあるけど、だんだんそれだけだと飽きてしまう。

要するに、出たく無いを、出たいが上回ったってだけ。

それに今は…」

「今は?」

由紀乃が俺の手を強く握った。

言わせんなよ、恥ずかしい…ということらしい。


「手、ちゃんと握れるようになったんだな。

昨日は俺の頭に手を置くのにも怖がっていたのに」

「さっきのあんたの話し聞いてたら、怖がってたのが馬鹿らしく思えた。

だって、馬鹿なんだもん、あんた」

「案外外だって、馬鹿ばっかかもしれねぇぜ」

「そうね……ありがとう」

暫くお互い無言でクッキーを貪った。

「ねえ」

「ああ」

「…私が情けない声を出したり、歩けなくなったりしても気にしないで。

私は、大丈夫だから。

……けど。

けど、その、本当に動けなくったりしたら、その…」

「お姫様だっこを御所望、と」

「うるさい。

そこまでしなくていい」

「へい。

それじゃ、そろそろ」

「行こう」

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