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スタティオン  作者: quklop
”fautht” 若かりしあの頃の彼女と冷たい鉄格子
78/120

58 ”twuourlth”

………。

…………。

寒いな、この部屋。

「結婚、しましょう」

「ああ」


……………。

………。

「なんで?」

「あんたが、結婚して下さいって言ったんじゃない」

「いや、そうだけどさ…」

「別に…愛してくれなくてもいい。

嫌いになってくれてもいい。

わかってるよ、あんたに…私に対して、その、そういうのが無いことくらい。

でも、それでも、私と結婚したいんでしょう?

あんたは、私の知らない何かを知ってる。

私と結婚することで、その何かをあんたは達成しようとしている。

違う?」

「違……わないけど、だからこそ、なんでだよ。

俺は、お前を道具にしようとしているんだぞ」

「あんたに幸せになって欲しいから。

あんたにもう、悲しんで欲しくないから…って感じで、どう?」

「どう? じゃねぇよ」


「じゃあ、いいわ。

言っちゃう。

言っちゃうよ。

…私、あんたの道具になりたい」

「……」

「別に、あんたを悲しませたことの埋め合わせってわけじゃないわ。

私がそういうの引き摺らないって、知ってるでしょ。

いや、もしかしたら知らないのかもしれないけど、私は、少なくともここにいる私はそうなの」

「俺の知ってるまんまだよ。

お前は」

「…良かった」


由紀乃が床に置いたクッキーの小袋を開けて、中身を食べる。

小さな口で、ゆっくりと。

袋の色は赤、つまりココア味だ。

俺は由紀乃の側に寄って、白い小袋を取り出して開けた。

由紀乃はいつも、ココア味とバニラ味を交互に食べる。

「本当なんだ」

由紀乃がクッキーを受け取る。

俺も、さっき投げつけられたやつを拾って食べた。

うまい。


「今のあんたは、昨日と違って、全部わかった顔してる。

あんたの言う通りにすれば、きっと、少なくともあんたは幸せになれる。

だから、私と結婚して下さい」

「…それで、お前は幸せになれるんだろうか」

幸せにしてやれる自信なんて、一欠片も無い。

「私には、その、あの、えっと……あんたしか、いない。

だからあんたが、幸せなら。

私は、幸せ」

そうして、言わせないでよ、だなんて言って顔を埋めるものだから、俺にはもう拒否権なんてものはなかった。

いや、俺から頼み込んだんだけどな。


「ふつつかものですが、宜しくお願いします」

本日二度目の土下座だ。

「き、急に改まらないでよ。

……こ、こちら、こそ」

「いいんだよな、本当に」

「くどい!」

「…だって、道具だぞ?」

「いいの。

それに、」

顔を上げると、すぐ近くに由紀乃がいた。

「あんたは、物を大切にする方だって、よく知ってるし」

………。

昨日、携帯ぶん投げたけどね。

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