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スタティオン  作者: quklop
”fautht” 若かりしあの頃の彼女と冷たい鉄格子
77/120

57 ”feyth”

「う、え、あ?」

まあそりゃ、驚くだろう。

俺だって驚いてる。

こんな馬鹿げた作戦を思いつき、はたまた本当にそれを実行に移してしまう俺に心底驚いている。


「……んで、なんで、なんで!?」

なんでかって?


「説明しよう!

俺はお前を愛しているからである!」

「こんな時にふざけんな!」

殴られた。

あんまり痛くない。

むしろ顔をしかめて拳をふーふーやっている由紀乃の方が心配だ。


「あんたって、いっつもそう…。

まるで何かから逃げるみたいに、誤魔化して嘘ついて。

……本当はわかってた。

昨日夢を見たなんて言ってたけど、あれも全部嘘でしょ」

「嘘じゃない。

本当だ」

嘘だ。


「あんた、どこかおかしかったもの。

まるでSF映画のひとりぼっちの主人公みたいな顔してた。

まるで違う世界から迷いこんで来たみたいな…ううん、違うな。

昨日まで信じてたもの全部に裏切られて、どうしようもない程悲しくて、でもどうすればいいかわかんない、そんな顔」

「実は本当に違う世界から来てたりしてな」

本当だ。


「……私、死んでたの?」

…………。

本当だ。

それ故、

「そう、死んだんだ、私」

何も言えなかった。

言えるわけが無かった。

よくわからない機械の音だけが、ブーンと響き、そのまま長いような短いような時間が流れていく。

…………。


「ごめんね」

その流れを断ち切ったのは、由紀乃の少し掠れた声だった。

「なんでお前が謝る」

「私が、あんたを悲しませた。

きっと、こことは違うどこかの世界で私は死んだ。

そのせいで…私のせいであんたは、ここに来たんだ。

違う?」

「違う。

由紀乃のせいでは間違いなく無いし、もっと言うならば、誰のせいかもわからねぇ。

誰のせいでもないのかもしれない。

まあ、なんか黒幕っぽいでっかいおっさんは居たけどさ」

ああ、ダメだ。

これじゃ、自分でそういうことが有ったと肯定しているようなものだ。

やっぱり、由紀乃には勝てない。


「ねえ、今は嘘、ついてないんだよね」

「ああ、つこうと思ったけど、お前には勝てなかった」

「…そう。

ねえ、あんたが今、自分でどんな顔しているか、わかる?」

「わかるわけねぇだろ。

鏡でも見なきゃ」

「でも、自分の顔以外は何でもわかるって顔してる」

そんな自信家だったっけ、俺。

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