57 ”feyth”
「う、え、あ?」
まあそりゃ、驚くだろう。
俺だって驚いてる。
こんな馬鹿げた作戦を思いつき、はたまた本当にそれを実行に移してしまう俺に心底驚いている。
「……んで、なんで、なんで!?」
なんでかって?
「説明しよう!
俺はお前を愛しているからである!」
「こんな時にふざけんな!」
殴られた。
あんまり痛くない。
むしろ顔をしかめて拳をふーふーやっている由紀乃の方が心配だ。
「あんたって、いっつもそう…。
まるで何かから逃げるみたいに、誤魔化して嘘ついて。
……本当はわかってた。
昨日夢を見たなんて言ってたけど、あれも全部嘘でしょ」
「嘘じゃない。
本当だ」
嘘だ。
「あんた、どこかおかしかったもの。
まるでSF映画のひとりぼっちの主人公みたいな顔してた。
まるで違う世界から迷いこんで来たみたいな…ううん、違うな。
昨日まで信じてたもの全部に裏切られて、どうしようもない程悲しくて、でもどうすればいいかわかんない、そんな顔」
「実は本当に違う世界から来てたりしてな」
本当だ。
「……私、死んでたの?」
…………。
本当だ。
それ故、
「そう、死んだんだ、私」
何も言えなかった。
言えるわけが無かった。
よくわからない機械の音だけが、ブーンと響き、そのまま長いような短いような時間が流れていく。
…………。
「ごめんね」
その流れを断ち切ったのは、由紀乃の少し掠れた声だった。
「なんでお前が謝る」
「私が、あんたを悲しませた。
きっと、こことは違うどこかの世界で私は死んだ。
そのせいで…私のせいであんたは、ここに来たんだ。
違う?」
「違う。
由紀乃のせいでは間違いなく無いし、もっと言うならば、誰のせいかもわからねぇ。
誰のせいでもないのかもしれない。
まあ、なんか黒幕っぽいでっかいおっさんは居たけどさ」
ああ、ダメだ。
これじゃ、自分でそういうことが有ったと肯定しているようなものだ。
やっぱり、由紀乃には勝てない。
「ねえ、今は嘘、ついてないんだよね」
「ああ、つこうと思ったけど、お前には勝てなかった」
「…そう。
ねえ、あんたが今、自分でどんな顔しているか、わかる?」
「わかるわけねぇだろ。
鏡でも見なきゃ」
「でも、自分の顔以外は何でもわかるって顔してる」
そんな自信家だったっけ、俺。




