50 ”saniaye”
ふふっと清水が笑う。
「あれ?
もしかして知り合いだったのかい?」
「もしかしなくても知り合いだよー。
ううん、それ以上かも」
ぽっ、という擬音を口で発音して、清水が頬を赤らめる。
おっさんが見たら泣くぞ。
「知り合いなのはそうなんだが、清水こそなんでこんな奴のところにいるんだ?
おっさんは警備隊の隊長なんだろ?
いいのかよ、テロリストなんかやってて」
「いいのよあの人は。
何か確固たる意思を持ってあの仕事してるわけじゃないし。
それに私がテロリストとして活動することで、あの人達の仕事が生まれる。
協力関係にあるのよ、私たちは」
ふふん。
何故か自慢げに鼻を鳴らす清水。
「じゃあ、清水には…」
「早苗ちゃんって、呼んで欲しいなぁ」
「…………。
お前には、確固たる意思ってもんがあって、テロリストをしてるのか?」
「うん。
あの人にね、今のお仕事を辞めさせてあげたいの」
させて、あげる?
清水の言葉のニュアンスに、引っかかるものがあった。
「…続きは、後にしましょ。
後ろの可愛い彼女が、膨れちゃってるわ」
むすー。
そんな擬音が聞こえてきそうな具合に、エイダが頬を膨らませていた。
まあ、エイダと清水の面識は薄いし、あんまり面白い話じゃなかったか。
「みんな疲れたでしょう?
まだ朝にはならないし、お布団敷いてあげるから、一旦寝てきなさいな」
鼻歌を歌う清水の後ろ姿を見て、俺は魚の小骨が喉に引っかかるような感覚を覚えた。
そういえば昨日店で佐上と一緒にいるところを見られていたのだから、そこから清水がどのような行動を取るかで、さっきまでの襲撃騒動の模様がだいぶ変わっていたはずだ。
例えば、清水が夫に監視カメラを確認するようにと告げ口をすれば、おっさんは嘉賀家を襲撃するだろうし、日高にだけ同じようなことをすれば、今度は紅玉の会だけが襲撃を仕掛けてくる。
ところがどういうわけか、現実では両者が同時刻に俺の家を襲ってきた。
たまたまなのかもしれないけれど、たまたまにしては、タイミングが噛み合い過ぎている様な気がして仕方がない。
冷静に考えてみると、清水は警備隊と紅玉の会、両方のトップに繋がりがある。
やろうと思えば、清水は国をひっくり返せる。
そんな気がしてならない。




