1 ”tglain”
…Welcom to the ”thtatyhion”…
『あ、本日の、ご乗車、まことに、ありあとう、あんした。
次の、……、お乗り換えは、…………』
ガタンゴトンと電車が走る音。
どうやら俺は、座席の上で寝てしまっていたらしい。
ところで、俺はどうして電車なんかに乗っているのだろう。
エイダは?
「クッ……ックッ…………すぅ…」
肩に人一人分の重さを感じる。
俺に寄りかかって寝ているようだ。
なんだか、眠いな。
寝ぼけた目で、トンネルの内壁を写す車窓をぼおっと眺め…
!?
眠気が消し飛んだ。
トンネルを過ぎた先の景色は、俺が今迄生きてきた中で、一度も見たことのないようなものだった。
黄色の空に、雲のかわりにタコのような謎の生き物が無数に浮かび、地面からは緑色の人間がまるで雑草のように茂り、湖はブクブクと泡立っている。
CGか?
きっと俺が知らないようなマイナーな洋画の宣伝か何かだろう。
随分とよく出来てるな。
それにしても趣味が悪い。
揺れも手伝って吐きそうになってきた。
また、電車はトンネルの中を進む。
トンネルの中、視界に微かな明かり以外が映らなくなったことで、少し落ち着きを取り戻す。
今の日本にあんな技術はあったか?
電車の車窓がコマーシャルを流すなんて、そんなものを俺は今迄に見たことがあるか?
いや、仮にそういった技術が実在して、既に実装されていたとしよう。
そんな大層な実験的技術を、何よりあんなクオリティのCGを導入できる程の、大金をかけた映画などその他諸々の作品、何故それを俺が知らない?
自慢じゃないが、そういった娯楽作品に対する知識は、副業の間柄なかなかなものだと自負している。
……ま、寝ぼけてたんだろ。
暫く考えても答えは出そうになかったので、取り敢えず安易な結論を出しておいた。