16 ”moeyiiiii”
「あ、ええっと、その…すいませ…」
少しずつ声が小さくなっていく千梨。
そんな女の子をつぶらな瞳で見つめるおっさん。
ちょっと可哀想になってきた。
いきなりやるようなことじゃなかったか。
と、思った矢先。
「…うちの娘に、ならんか?」
「「はい?」」
俺も千梨も呆然と棒立ちで某所の坊主が防寒着用の屁をこく。
つまり、わけがわからない。
「い、いや、なんだったらかかあと別れてもいい。
結婚、しねぇか?」
おっさんのあの目つきは完全に乙女モードに入ってしまっている。
まあ、わからなくはない。
千梨は可愛い。
このサイズだからこそ、可愛い。
「え、あ、うえ?
ど、どど、どどっど、どうしましょう!?
球根ですか?いいえ求婚ですよ!?
そ、そうだ、こんな時こそ落ち着いて
、すまーいる、すまい、る?」
ここで笑顔を浮かべるのは、どう考えても悪手だ。
なぜなら、千梨は笑うともっと可愛い。
無論おっさんはますますヒートアップしてしまった。
「ふ、ふお、ふおおおお!
萌ええぇぇぇええぇぇぇぇええ!!」
おや、何事だ? といった風に、おっさんの叫びに釣られて人が集まってきた。
俺達の周囲が、がやがやとしだす。
挙句の果てには、おっさんの家からかみさんらしき女性が飛び出して来て、その場で夫婦喧嘩を始めてしまった。
こんな状況になっても千梨はおどおどはするものの、俺の服の中に隠れるようなことはしなかった。
一応捕捉しておくと、今俺が着ている服にはフードが付いていて、今現在俺はそれを被っていないので、隠れたくても隠れる場所が無かったということは無い。
…日高、お前の言葉、実証してやったぞ。
判決を言い渡す。
嘉賀千梨はいい奴だ。
それにしても、ちょっとやり過ぎたな。
カメラを構えたメガネの男が近づいて来たので、急いで身を隠せそうな場所を探す。
よし、左前に丁度良さそうな裏路地を発見。
こんなのあったっけ? と思いながらも俺は裏路地へと突っ込んだ。




