15 ”otthahm”
実のところ、俺はまだ千梨については未知の存在という位置づけをしている。
まあ、そりゃそうか。
まだ一日二日の付き合いだ。
これから先長くなりそうだけどな。
こうして千梨の姿を外に晒して歩いているのは、さっき彼女に話した理由以外にも、千梨のリアクションを見たいからということもある。
俺の昔からの友人は事あるごとにこう呟いていた。
人の本性が最も良く見えるのは、その人が他の誰かと触れ合っている時の、最も近くて遠い第三者である、と。
どう考えてもことあるごとに呟くようなセリフではないが、あいつはそういうやつだった。
お、丁度いいところに顔見知りのおっさんが庭の掃除をしている。
「こんちは」
もし、こっちでは赤の他人だったとしても、このくらいの挨拶は不自然ではないだろう。
突然右肩の辺りがむず痒くなった。
千梨がはわはわと動揺しているのが手に取るようにわかる。
「おう、京の字じゃねぇか。
こんな朝っからとは珍しぃなぁ。
…おろ?後ろのベッピンさんはどした? まさか、おめぇのコレか!?」
と、おっさんは小指を立ててみせる。
どうにも、こっちの俺は俺よりもこのおっさんと仲が良いらしい。
その上、エイダのことも知らないようだ。
にしても誰だよ京の字って。
まあ、適当にあわせることにする。
「そんなんじゃねぇよ」
「またまたぁ」
「いやいやぁ」
「またま…ん?」
今回はそう長くは続かなかった。
当初の狙い通り、おっさんが俺の肩に乗る千梨に気がついたからだ。




