10 ”neighm”
「命名する!」
「する!」
「ふえっ?」
エイダの部屋のベットでぐっすりと眠っていた彼女が、文字通り飛び起きる。
無理もないだろう。
隣で一緒に眠っていたはずのエイダとついでに俺が、なぜかベットの前で仁王立ちをしているのだから。
「今日からお前は」
「姉は」
「えっ、あっ、はい」
俺はすうっと息を吸い込んだ。
人に名前を付けるってのは、凄い重たいことなんだな。
「お前の名前は、センリだ」
俺はポケットから折りたたみ式の携帯を取り出して、適当なメモ帳アプリに千梨と打ち込んでみせた。
「なまえ…?」
「ああ、そうだ」
「誰の?」
「お前に決まってるだろ?
もう一度言う。
今日からお前は千梨だ」
千梨は口をぽっかりと開けて、それから声をあげて泣き笑いをした。
「センリ、大丈夫?
痛いのか?」
心配そうにエイダが屈み込んで千梨を覗き込む。
「あは、あはは!
ふふふふふ、ああっ…。
…いたい」
「キョー!キューキュー車!」
俺は救急車じゃない。
「はらいたい!
笑わせ殺す気ですか!
私に、こんなちっぽけで、なんにも出来なくて、誰の役にもたてなくて、怖がりで、強がりだけど弱くて、溶けることすら出来なくて、死ぬことすら出来なくて、邪魔ばかりで、昨日だって今日だって、あなたたちに迷惑ばっかりかけてて、でも、こんな小さな体じゃ、フライパンだって持てなくて、こんな、こんなゴミ屑のなり損ないみたいな私に、名前だなんて!!
ほんと、おかしな、こと…」




