9 ”hghylragui”
「ところで、少年」
と、脈絡もへったくれもなく、男は話しを始める。
「一応もう青年と呼ばわれるべき年齢なんだが」
まあ仕方が無いとは思うが、初対面の奴に子供に間違われる度、ウンザリとした気分になる。
「君は知っているか? 三日後に革命が起こることを。
いいや、知るはずも無い。
何故なら君は、知らないのだからな」
「そりゃそうだな。
知らないことは知らねぇよ。
んで、何を知らないって?」
「いいか? 三日後に革命が起こる。
革命が起こるのだ。
少年よ、備えろ。
使える物は使い尽くし、明日と明後日の間に準備を整えよ。
お前の隣にあるその箱を使うのもいいかもしれない」
箱とはパソコンのことなのだろう。
「兎に角、情報を仕入れ体制を整えるのだ。
いいな?」
「はあ、そうかい」
俺に備えろとしつこく警告してくるということは、その革命とやらが何らかの形で俺に関係してくるのだろう。
まあ、なんにしろ、まだ俺はこっちの世界についてほとんど何も知らない。
情報を仕入れるべきではある。
その前にやらなきゃならんことが幾つかあるが。
そのうちの一つを終わらせるとしよう。
「ところでグラサン」
「私はグラサンでは無い。
柊だ」
「んじゃ、柊。
俺がまだ知らないことが、もう一つあるんだ。
どうしてお前は、頭にエイダのパンツを被っているんだ?」
「………」
清々しいまでの真顔である。
「何か、どうしてもそうせざるを得ないような理由があるなら言え。
それは返して貰うが、俺はお前のその変態的行為に目を瞑ってやる。
それが、俺がしっかりと納得できる理由ならな」
一拍おいて、柊は深刻そうな表情でそれを語り始めた。
「私はこうすることで性的にこうふ…」
唸れ! 俺の右腕!!
「なんちゃらかんちゃらスマアァッッシュッ!!!」
「ん"ジャめ"ナ"ア"ァ"ッ!……ゴフ」
奇声をあげ、柊は床に倒れ伏し、そして何故か足の先から透明になっていった。
そうして最後に残ったのは、エイダのパンツだけだった。
一体、何だったんだろう。
虚無感に囚われて、俺は無気力にエイダのパンツを見つめた。
コンコン。
ノックの音。
「キョー入るぞ」
「…ああ」
「キョー、姉、名前付けるべき」
「…ああ」
「私、考えた、これどう?」
「…ああ」
「キョー?」
「…ああ」
「なんで私のプンツがここにある?
なんでお前はそれを見ている?
「…ああ…………全てが虚しいからさ」
エイダのビンタによって現実へと帰ってきた俺は、エイダが精一杯考え出したひっどい名前に、ひとしきり笑い転げた後、例のwebページを閲覧してそれっぽい単語を探す作業に戻った。




