5 ”koock”
「エイダ、そっちの下ごしらえを頼む」
「ロゲル」
「ああ、ええっと、ラジャーな。
いや、イギリス英語的にはロジャーか?」
「おお、そうか。シッケイシタ」
冷蔵庫には、俺が買った覚えの無い食材が、取り敢えず一般家庭で出るような料理だったら、一通り作れるくらいに揃っていた。
こっちの俺は金持ちだったのか?
最初はまるで人の家のものを漁っているようで、少し抵抗があったが、そもそも俺が買ったものの筈だと思い直して、俺たちは調理に取り掛かった。
「ふすーん。まるで夫婦みたいですねぇ。和みの風景なのです」
「そんなんじゃねぇよ」
「またまたぁ」
「いやいや」
「またまたまたまたぁ」
「いやいやいやいやぁ?」
「……………」
「……………」
「またまたままたまたまたまたまた!「いやいやいやいやいやいやいやいや!!「まぁたまたまたたまたまいあいあ!!!「いやいやいやいやい…」」」」
ゴフシ。
頭を鈍器のような物で殴られた。
「キョー、終わった」
そこには、鉄製のスープとかすくうやつを手に持って、ご立腹なご様子のエイダ様が仁王立ちをしていたのだった。
「えっちゃんこわーい」
おどけた調子でそういって、彼女が俺の服のポケットに潜りこんだ。
馴れ馴れしいやつだ、全くもって。
…悪い気はしないがな。




