4 ”knyack-deythinckhan”
「姉、叫んだ。
さっきまで、笑ってたのに、たすけてって。
叫んだ……」
ガラスの向こう側で、女の子が口を動かす。
やっぱりあれは、「たすけて」だったのか。
たすけられなかったな。
「ごめん」
気がついた時にはもう、口に出していた。
「キョーは、あやまる、違う」
「…謝らせてくれよ。
俺が動くのがもうちょっと早けりゃ「こんにゃく大神官」こんなことにはならな……ん?」
「こんにゃく大神官!」
「エイダ、お前か?」
「違う、こんな声、出ない」
「じゃあ、幻聴って「こんにゃく大神官っ!!」ことで」
「わか「こっんっにゃっくっ大☆神☆官っ!!」った」
………
その妙な声は、エイダの胸の辺りから聞こえた。
もっと言うと、その声はくぐもっていた。
つまり……。
「「喋ったあぁぁぁあ!?」」
エイダが抱えている腕が喋っている。
らしい。
エイダは慌てた様子で、ソファの上に、腕を置く。
いろいろあったけど、流石にそのいろいろの比にならないくらいには驚いた。
腕には、人間の口らしきものが出来上がりつつあった。
少しづつ、小さいが誰が見てもそれとわかる形に出来上がっていく。
足が手が指が髪が。
目が鼻が耳が眉が。
おまけに何故か服までも。
みるみるうちに、唯の腕だったそれは、小さい人間の形を成していく。
そして…
「ふぃー。たすかりました」
その声を聞いた時、誰も謝らなくて良かったんだな、と、まるで魔王が勇者に倒されたかのような気持ちになった。
「腕に基礎成長回路を集中させておいてよかったぁ。
少し身体はちっちゃくなっちゃいましたけどね。
あなたが拾ってくれなければどうなるかと……へ? みなさんなんで泣いてるんですか? ほら、笑顔ですよ、笑顔!
すまーいるすまいるっ」
ピョンっと三つ編みを跳ねさせて、手のひらサイズの女の子が、にっこりとお手本のような笑顔を浮かべた。
「ハハっ…本当に、変な、やつ、なんだなぁ」




