3 ”heial”
「ただいま…」
「…カエレ」
「おかえり、な」
「シッケイした」
形だけの何時ものやり取りを終えたあと、俺はリビングのソファに倒れこんだ。
無理だ。
何もかもが、俺の許容範囲を超えている。
無理だ。
こんな世界に、生きていけそうにない。
そんな気持ちになった時、
「………」
エイダはいつも、何も言わず側にいてくれる。
センサーでも付いているのだろうか?
感情を測れるやつ。
それからどれだけの時間そうしていただろう?
いくらかの時間の後、少し顔をあげると、隣りに座っているエイダは、あの女の子の腕を抱き締めて、目を閉じていた。
「持って来てたのか、それ」
「姉、言っていた」
「そっか」
「少し、喋った。
直ぐ、わかった。
変なやつだった」
「そうなのか?」
「抱きついた、私に。
それで、その後、こう言った。
私と一緒に溶けてくれる人、いて、良かった、ありが、とう、って、笑ってた」
溶けるというのは、あの釜に落ちることを指すのだろう。
事実、彼女は溶けた。
腕だけ残して、たった一人で溶けてしまった。
「私、わからなかった。
溶ける、なんなのか。
その後、機械に、引っ張られて、運ばれて、………」
エイダは、泣いていた。
俺は、隣りに座り直して、エイダの頭を撫でた。
手に、ふわっとした髪の感触が伝わる。
人間のそれとの違いがまるでわからなかった。




