8 ”palrenutv”
ぽかん、となる。
「エーディーハイフン?
なんだ、そりゃ」
「生体機械とでも言いましょうか。
AD-433k、ええと、佐々木エイダは、人工的に作られた人間です。
生体金属製のボディの中に、人間の生体活動を行う為の全ての動作を、電気信号などを用いシミュレートする生命演算装置を内蔵し、個体毎に独自の自己学習プログラムを備えた……まあ、なんと言えばいいのやら。
人間に限り無く近いロボット? とでも言えば、納得して頂けるでしょうか」
納得できる筈が無い。
だが、電車に乗ってからこれ迄の短い時間で、俺は余計な駄々を捏ねるよりは、取り敢えず現状をありのまま受け止めた方が有益だと、嫌という程学習していた。
佐々木エイダはロボットである。
高野が嘘をついていなければの話だが。
ここで俺は、一つ恐ろしい仮定に辿り着く。
「…じゃあ、佐々木エイダっていう名前も、イギリス人と日本人のハーフってのも、あの変な言葉使いも、あいつの好きな服や食べ物や動物や何やら、全部纏めてただの設定だったって事か?」
あいつの全ては、人工の嘘だったのか?
そうだとしたら、俺はこれからあいつの前で、どんな顔をしてれば良いんだ?
「そうだ、とも言えますが、違うとも言えるでしょう。
彼女達はスタティオンの外に出てからすぐに活動を始められるように、予め外見年齢に合った、貴方の言うところの設定をランダムでセッティングされます。
その後は、彼女達自身が様々な事柄を経験していく中で、趣味趣向などの付加設定を作り上げていきます。
よく考えてもみてください。
人間だって似たようなものでしょう?
親を決められる子供なんて、存在しませんし、生きていく中で、性格が全く変わることのない人間も、やはり存在し得ません。
人間も機械も、命があれば大して変わりはありません」
違うと言えば、生まれ方くらいなものでしょうか。
と、ついでといった感じで、高野が付け足す。
そういえば、俺はエイダの親には会った事がなかった。