7 ”AD-433k”
「さっぱり理解できんが…」
高野の後を歩きながら、俺は状況の整理をしようと口を開く。
「兎に角俺は、普段通りの生活をしていればいいんだな?
別に特別なことは、なんもしなくてもいいんだよな?」
「ええ、その通りです。
但し、貴方の言うところの普段通りの生活というものが、降車するスタティオンによっては大分変わってきてしまうでしょうが」
高野の口ぶりからゾワリと嫌な予感が漂ってくる。
世界によっては普段が変わってくる……。
例えば、俺がこれから行かされるであろう別の並行世界が、大絶賛世界大戦中の世界だったとしよう。
…俺、死んじゃう。
「大丈夫ですよ。
先程も申し上げましたが、あの電車が停車するスタティオンは、必ず貴方に適性のある世界のスタティオンです。
例えば、恐竜が闊歩し火山が噴火しているような世界には、貴方は行きたくても行けません。
当然のことです。
線路は貴方自身が開拓したのですからね。
貴方とこの世界の先にあるもの、それが次のスタティオンなのです」
やはりようわからん。
わからないので、歩きながら周囲を観察してみる。
とは言え、本当にただの駅のホームのようで、別段変わった物は見当たらなかった。
なんてことのない、ただの駅と同じだ。
俺たち以外に、生き物らしき物が全く見当たらない以外は。
「さて、そろそろですかね。
…先程貴方は、クジを引いた覚えなど無いとおっしゃいましたね」
「ああ、言葉通りそのものの意味じゃなかろうと、俺にはそんな記憶は無い。
まあ、俺が気がつかないうちに、そういうものにかけられていたとしても、別にどうとも思わないが」
どうあれ、たまたまそうなったというだけの事だ。
流石に世界の存亡がどうたらこうたらというのは、荷が重すぎると思うが。
「そうですか、それを聞いて安心しました。
そろそろタネ明かしを致しましょう。
AD-433k、貴方がエイダと呼ぶ女性のことです。
貴方が、彼女を拾った瞬間、貴方は観測者に抜粋されました」