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「運転お疲れ様。
助かったぜ、涼くん」
「はあぁ…。
全くだぜ。
あいつら、しつこ過ぎる。
ってか、涼くんはやめろ」
元桂木警備隊本所前広場、元結婚式場に戻ってきた。
もちろん気絶した桂木も乗せてきた。
当然警備隊員達も追い掛けて来たが、今はゆきひろファンクラブの愉快な面々がバリケードを作って抑えてくれている。
「京之介さん。
玲子ちゃんが、あげたい物があるって…」
あげたい物?
何だろう、とてもワクワクする響きだ。
俺は出来る限り高速なスキップでルンルンララんという具合に玲子に突っ込んだ。
「へぶし」
何故かカウンターパンチを貰った。
「これはお父様を殴った分」
ああ、あげたい物って、そういう……。
まあいいか。
パンチを貰って倒れた時にパンチラもバッチリと頂いたので、プラスマイナスゼロだ。
「それと」
「ん?」
起き上がると、玲子にキスをされた。
唇どうしじゃなくて、丁度外国人が挨拶がわりにやるような、ほっぺへの軽いキスだ。
「お、おいおい、俺には妻がいるんだぜ?」
「?
挨拶みたいなものなんでしょう?
よく知らないけど。
感謝の気持ちを伝えるって本に…」
「日本ではそれはするな。
もう二度とするなよ。
いいな?」
「?
わかった」
周囲を確認。
コードネーム、白い悪魔は目視で確認できず。
……セーフだ。
「何故私がそんな事をしなければならない」
無様に椅子に縛りつけられた桂木が文句を垂れる。
「ねえ、今のあんた、そんな口をきける立場だと思う?」
「くっ」
対人恐怖症が治ったらしい由紀乃は、なんというか、ちょっと女王様気質になってしまったらしい。
靴の踵で桂木の爪先をグリグリと踏みつけている。
…正直ちょっと羨ましい。
いや、流石にあれは、まだ俺にはハード過ぎるか。
桂木のスーツと鞄から大量の不祥事の証拠が出てきた。
早速俺はそれをデジカメで撮影。
後はこれをネットに流せば、桂木にチェックメイトがかかるという状況だ。
さて、そんなこの世界の日本史に残るであろう革命の直前で、俺たちは酒とジュースとケーキ、そして桂木を囲んで踊り、歌い、騒ぎまくっていた。
冷静になってみると、結構シュールな光景だ。
今のメインイベントは由紀乃と愉快な仲間達による、桂木尋問ショーだ。
そもそもが天才少女なだけあって、由紀乃は人や状況や情報等を駆使して桂木を震え上がらせ、次々と情報を聞き出していった。
こりゃ、浮気はしない方がいいな。
今は桂木に結婚式の神父役をやらせようと交渉しているようだ。
流石にアレは冗談だと思っていたのだけれど、どうやら由紀乃は本気で実現させるつもりらしい。
「「「「「神父! 神父! 神父! 神父!」」」」」
謎の神父コールが沸き上がり始めた頃、俺も良く知っている男が一人、群衆を飛び出して桂木の隣に立った。
「日高!」
「やあ、京ちゃん。
大体三十時間ぶりだね」
清水やカナタ達の日高への対応は冷たかった。
「何しに来たの?」