5 ”wahurude”
「言いたいことも沢山あるでしょうが、先ずは私の話を全て聞いて下さいませんか?
その後に、質問タイムを設けますので」
「貴方にお願いしたい事があるのです。
もちろん、貴方にしか遂行できないお願いでございます。
貴方には、先程乗って頂いた電車に乗り継いで、スタティオンからスタティオンをひたすらに渡り歩いて欲しいのです。
…ええと、ああ、スタティオン自体の説明を先にした方がいいですか。
並行世界という考え方はご存知ですよね。
はい、同じ時間軸で、別の可能性の世界が存在しているかも知れないというアレです。
スタティオンは言ってしまえば、並行世界単位の駅のようなもので、スタティオンとスタティオンは、先程乗って頂いた電車で行き来…は出来ませんが、行くことは可能です。
そして、貴方にはどこ迄も行って欲しいのですよ。
ですが、まあ、それは容易ではありません。
スタティオンを繋ぐ線路は、貴方が観測した分しかありませんので、貴方自身に路線の開拓をして頂く必要があります。
…あ、少々わかりずらかったようで。
まあ、簡単に言ってしまえば、貴方自体は、これ迄通りの生活を送って下されば良いのです。
きっと貴方は、ご自身が気がつかないうちに、路線を開拓することになるでしょう。
だからこそ、貴方にしか頼めない話なのです。
ええ、もう既に貴方は開拓してしまっているのですよ。
あのコーヒーを口にした時に。
そんなに簡単なものなのかって?
いえいえ、そういったものばかりでは御座いません。
ただ、貴方が思うように人生を送っていただければ、それで問題は無いです。
少し茶々は入るやも知れませんが。
…いえ、なんでも。
なぜそんなことをさせるのか? ですか。
流石です。
そういった精神が開拓を促進させるのです。
わかってらっしゃる。
ああええ、正直な話をしてしまいますと、この世界、というのは今貴方が観測している世界ですが、兎も角、この世界はこのまま何もせずにいると滅亡します。
それも大体三日後に。
寿命を迎えると言い換えても問題はありませんね。
停滞し過ぎたんですよ、この世界は。
そこで、貴方に観測者となってもらい、また別の可能性の世界を見てきて頂きたい。
貴方が他の世界を観測すれば、その他の世界が『この世界』であるという事になるのです。
ええ、お気づきの通り、貴方はクジでハズレを引いてしまったのです。
世界の存亡を背負ってしまったのですよ、あなたは。
クジなど引いた覚えは無いと?
ははは、面白い人だ。
まあ、それに関してはまだお答えしていない方の、貴方からの質問に関係してくるのですが。
…ご覧になりますか?」