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スタティオン  作者: quklop
”fautht” 若かりしあの頃の彼女と冷たい鉄格子
109/120

89”erlurloha-2”

「火だ…」

玲子がポツリと呟く。

「どうして?

まだあたしがいるのに」

呆然とした様子で、佐上は崩れ落ちた。

おっさんがぽんと手を拳で叩く。

間の抜けた音だ。

「いいものをやるって、これの事か。

まさか火事を頂くことになるとはな」

突如けたたましく鳴り響く火災報知器の音で、俺はようやく現状を飲み込む。

つまりヤバイ。


「お前ら、俺のことはほっといて、さっさと逃げろ!」

まさかこんなB級映画のようなセリフを俺が言うことになるとはな。

この牢から脱出する方法は無い。

つまり、詰みだ。

「何言ってるんですか、京之介さん!」

「何ってなんだよ!

見りゃわかるだろ、どうしようもねぇよ!

俺はもう駄目だ。

お前らだけでもさっさと逃げて生き延びてくれ」


こんな冷え冷えとした牢屋の中で焼け死ぬだなんて、俺だって嫌だ。

だが、もうどうしようも無い。

ヘマをやらかしたのは俺だ。

俺の失敗にお前らを巻き込みたくは無い。

「いや、そうじゃなくてですね…」

何がそうじゃないんだ?

「キョー、パンツ」

「俺はパンツじゃない。

ったく、こんな時にまで俺もお前も何を言って…」


いや、待てよ?

エイダ語研究者としての知識と経験をフル動員する。

エイダがパンツのことをパンツと呼ぶ筈が無いんだ。

パンツ…pants…ぷあんたう…panntsu…。


あ、そうか。

殴りゃ良かったんだ。


助走をつけて腕を振り上げる。

腰を捻り、重心を前へ。

鉄柱に向かって、俺は右ストレートを放った。


ガイイインッ!!


サイレン音にすらひけを取らない轟音が鳴り響いて、どういう原理なのかはわからないが全ての柱が砕け散った。

多分床に埋まっているところでそれぞれの柱が繋がっていたんだろう。


「さっすがー」

カナタが口笛を吹く。

だが煙を吸い込んでしまったようで、音は途中で激しい咳に変わった。

「おやおやこれはマズイですよ。

もう直ぐ近くのところまで火の手が上がっているようです」


「別に問題無いな。

嘉賀、出来るだろう?」

おっさんが牢の奥の壁を指差す。

さっき迄俺は一体何に絶望していたのやら。

「容易いご用だ!

鈴木、玲子を頼む」

「了解です」

俺は牢屋壁に向かって飛びかかった。

「っおら!」

流石に鉄格子のようにはいかず、壁が全て吹き飛ぶことは無かったが、人が通るには充分な大きさの穴が空いた。

「ついてきてくれ、俺が道を作る!」


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