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スタティオン  作者: quklop
”fautht” 若かりしあの頃の彼女と冷たい鉄格子
107/120

87”thteph-4”

〜嘉賀京之介〜


よし、オールクリア。

作戦は順調に進んでいる。

後は俺がしくじらなければ、俺達の勝ちだ。


トランシーバーからカナタへ連絡を繋げる。

「お疲れ様。

お前らはもう帰ってくれ」

『え?

もうですか?

まだ何か出来るんじゃ…』

「帰れ」

『………わかりました。

あの、それじゃあ』

「気をつけて帰れよ」

リスクを管理するのは俺の役目。

あいつらに何かがあったら日高に怒られてしまう。


「良いのか、嘉賀?」

「いいんだよ。

でも、あんたら夫婦にはもう少し付き合って貰うぜ」


おっさんが更衣室の扉を開けた。

誰もいない。

「いくらなんでも人少な過ぎじゃねぇの?

大丈夫かよ、ここのセキュリティは」

「なんだかわからんが、お前が外で起こした騒ぎの所為だろう」

「いや、まあこうなりゃいいなとは思ったが、なんつうか上手く行き過ぎてて不安だ」


さて、ついにこの時が来てしまった。

おっさんが一つのロッカーを指差す。

ネームプレートには嘉賀恭太郎の文字。

間違い無い。

あのクソ兄貴だ。


「うへぇ、吐きそう」

まるで自分のものであるかのような、丁度ピッタリのサイズが恨めしい。

恨めしいが有難い。


「…三人いる。

あいつのマネ、出来るか?」

「もうここまで来たら、なんでも出来るさ」

俺はふらっとした足取りで廊下に躍り出る。

「やあやあ、平警備員の諸君!

今日もむさっ苦しいね!

ご機嫌麗しゅう」

「こ、これは副隊長殿。

本日はご欠勤なされるはずで…」

「嫌だなあ、そんな他人行儀な呼び方は。

君と僕との仲じゃないか!

王子、と、呼んでおくれよ」

「…あ、あの」

「ハハハハハッ!

どうして今日もこの天井は、こんなに暗い色をしているんだい?

退屈じゃないか!

君、金箔を持ってくるんだ。

さあ、早く!」

いつの間にか、俺とおっさん以外は何処かに消えていた。

「……お前、実は本人だったりしないよな」

「次言ったら殴るぞ」

「ああ、やっぱりお前か」


その後も気味が悪いくらい順調で、数少ない残存した警備員は、俺が副隊長であることを少しも疑わなかったし、アクシデントは何も起こらなかった。


そういえば、由紀乃は今どうしているんだろうか?

こっちには絶対に来るなと伝えておいたけれど、結果的にNちゃんねるの住人を騙すことになって罪悪感を感じたりしてはいないだろうか?

そんなもの思いに沈む余裕すらあった。


「この先に佐上が捕らえられているはずだが、牢の鍵が閉まっていたら期待はするなよ」

「話が出来るだけでも充分だ」


離れていた時間は一日未満だというのに、なんだか数十年ぶりに幼馴染に会うような気分だ。

廊下の突き当たりを曲がって左へ。

特別に隔離されたその牢の鉄格子は一部開いていた。


「佐上っ!?」

佐上はぐったりとコンクリートの壁に背をつけて項垂れていた。

「おい、待て嘉賀」

おっさんの制止も聞かずに俺は牢の中に飛び込む。

「どうした?

何をされたんだよ、佐上?」


佐上は崩れ落ちるようにして、こちらに顔を向けた。

佐上の目が開く。

佐上はゆっくりと立ち上がると、牢の外へ向かって歩きだし、

「えっ?」

鉄格子の扉を閉じて鍵をかけた。

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