4 ”takhagnou”
便利というよりは、摩訶不思議と呼んだ方がまだ近いような気がする。
気がついたら電車に乗っていた、と思ったら、また気がついた時には駅…スタティオン?の中だった。
どんな超技術だ。
荒唐無稽。
あり得ない。
そんな感じの言葉を幾らでも並べられるような現状だが、不思議とこれは夢なのではないかと疑う事ができない。
……頭では、おかしいとわかってはいても、俺の感覚は今のこの事態が現実のものであると告げていた。
取り敢えず、この状況について詳しく知っていそうなこの男とコミュニケーションを取らなければ。
「…お、おい」
「いかがなさいましたか?」
返事が返って来た。
どうやら言葉は通じるようだ。
そりゃそうか。
さっきまで日本語で話しかけられていたんだから。
「何から何まで聞きたいことだらけなんだが、取り敢えず、お前は何なんだ?」
「おやおや、これは失礼。
私は高野と申します。
ここスタティオンの、まあ、何でしょうね? 全てを切り盛りしている者とでも思って頂ければ」
高野の顔を見上げると、シルクハットの奥の目が、笑っているように見えた。
取り敢えず、危険な存在ではなさそうだ。
さらに質問を続ける。
「それじゃあ高野、さっきからよく聞くけどスタティオンって何なんだ?」
…そういえばここに来る前に、エイダもスタティオンとかなんとか言ってたな。
そこ迄思い出してようやく気がつく。
そういやエイダがいない。
「それと、エイ…じゃなくて、俺のすぐ近くに女の子がいた筈なんだけど、彼女はどこにいる?」
こくりと高野は頷いて、ベンチの方を指差した。
「一からご説明致しましょう。
長くなりますからね、取り敢えずそこに座りましょうか」