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「マリー、すごいのね!」
「へ?」
「2位なんて知らなかった」
「ああー、そうだよね」
「てっきり、リストが2位かと思ってた」
「普通そう思うよね」
準備を終え、偶然出会ったフェリスと共に学園の正門に向かう。魔術と射撃の訓練評価2位なのは自分ではわかっていたが、人に「2位でしょ?」なんて聞かれたことなくて別に言ってもなかった。やっぱりそんなに意外なのか。そっかそっか、そんなに目立ちませんか。頑張ってたのに…
でも、魔術はともかく射撃に関しては、ジョンとの差が大きいからな。ジョンはまじでああ見えて断トツである。顔があれじゃなければきっと実戦も出来たのに!哀れ!
「射撃はジョンが断トツだしねー」
「そうだね。射撃してる時はすっごくカッコイイな」
「まじで?」
「うん!」
「うわー、それ本人に言ってあげるべき」
「ええ…迷惑じゃ…」
「いやいやそんなわけないじゃん」
「でも…マリーとジョンって」
「!いや、違うそれは違うから!」
「そうなの…?」
「そうなの!」
「でも、マリーはジョンのこと」
「いや別に…」
モブ顔仲間ではあるけど。
フェリスは不思議そうな顔をした後、もしそうなら応援するのにー、と残念そうに言った。いやいや、本当にそういうのじゃないです。むしろ、フェリスに誤解されたらジョンだって可哀そうだ。いや万に一つもフェリスとどうこうなる可能性はないだろうけど…いやあるのか?彼にも希望が?
「フェリスはジョンのこと、結構好みってこと?」
「やっぱり気になる!?」
「いや…(あいつにもたまにはいいことあったっていいかなって…)」
「そっかー、うんうん。私はねえ、嫌いじゃないな」
「へえ!あんまり顔はかっこよくないと思うけど、いいの?」
「私、顔は気にしないから…それに、あっさりしてるけど、結構整ってるじゃない」
「そう?」
え、そうだっけ?そう思ってジョンの顔を思い出そうとしたけど、いまいちはっきりと思い出せない。まじかよ…すごいな真のモブ顔って。割と一緒に行動したこと多いのに思い出せもしないなんて…特徴なさすぎ…あっ特徴のない顔を想像すれば…
「あ、ジョンだ」
「え?」
そうこうしているうちに、正門についたらしい。正門にはジョンだけ立っていた。リストとクロムはまだのよう。
「あー、こういう顔だった」
「は?何言ってんのお前」
「ふふふ。ジョンって、よく見ると結構カッコイイなって」
「ハハッ(そこまで言ってないと思う)」
「えっ…!?えっ、どうも…」
キョドっている。おめでとうジョン!そう思いながら私は視線を廊下の奥に向けた。リストとクロムはまだだろうか。…なんか、黄色い声援が聞こえるし人だかりが見えるけど。まさかね、まさか。
「リスト様ー!お気をつけて!」
「これ、私が作ったんです」
「待ってます!無事に帰ってね!」
「ふふん…みんな、ありがとね」
おお…ふふんて。ふふんて…お前はいつでもどこでもそういう笑いなの?もうちょっとこう…TPOとかそういうのは無いの?
「クロム様ー!こっち向いて!」
「キャー!クールなとこが素敵」
「待ってます!怪我しないでね!」
「………」
クールっつーかガン無視じゃないですか。なんかもうちょっとこう…愛想的なものはどこに置き忘れてきたの?
ぼんやりと見ていると、ようやく2人が正門に辿り着いた。ジョンと親しげに話しているフェリスに気付くと、同時に少し顔をしかめる。意外に気が合っていると私は思います。腹を割って話せば仲良く…は、なれないよね。恋敵ですもの。
「フェリス、ジョンなんかに構うことないよ」
「…ああ」
「?お話してただけじゃない」
「だよなー。リストとクロムこそ、何の用だよ」
「何って…!お前な!」
「…ジョン、調子に乗るなよ…」
「やだもう、どうしたの?喧嘩しないでよ」
こ、恋敵が、増える瞬間を見た…!確かに言われてみれば、ジョンもめちゃくちゃ不細工ではないし、射撃成績1位っていうステイタスはあるし、なんとか食い込める、か…?圧倒的に華が足りないけどそこには目をつぶれば。うーん、とりあえず、今後の任務生活が不安である。




