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『あ、もしもし、ジョン?こちらマリー』
『うん…』
『何、もしかして泣いてんの?』
『な、泣いてない!』
『そう…』
『なんだよ』
『依頼人に目標を引き渡し完了。依頼は完遂』
『了解。早かったな』
『依頼人、まだいたからさ依頼室に』
『へー』
『ノキア先生に褒められたよ、早いって。評定は良いだろうね』
『まじか。やったな』
『うん』
『あ、なんかちょっと、元気出てきた…』
『泣き止んだ?』
『な、泣いてないって!』
『はいはい。じゃあね』
通信機の通信を終了する。制服のホルスターに通信機をしまうと、机に座って伸びをした。
学園の制服は、いわゆる普通の学校の制服とは違う。見た目はそうごつくもないが、色々な場所にホルスターやポケットがあってとても便利だし、防弾・耐魔術・耐衝撃などが魔術と素材によって組み込まれている。
色は黒だが、金で校章や飾りが入っていて、地味すぎはしない。男子はブーツにズボンだが、女子はブーツと強化タイツとスカートで割と可愛い、と思う。ま、制服ダサいといくらエリート学校でも人が集まらないからな!
「んー…何しよっかな」
今日は戦闘実技の日だったから、他に授業は入っていない。依頼が早く終わりすぎてしまったので、暇になってしまった。他の班は恐らくまだ実技訓練中だろう。まあ、戦闘実技と言ってもたいていの班は人探しかもの探しだろうけど、運が悪ければ十分に時間が掛かる。今なら、訓練施設も混んではいないだろう。
立ち上がり、実戦訓練施設へと足を向ける。別にさほど熱心なわけではない、と自分では思うが、ちゃんと毎日訓練しないとなまってしまうのだ。
実戦訓練施設には、モンスターが放し飼いにしてある。もちろん、学園側には入ってこられないように結界と、電磁場による妨害と、高圧電線と…とにかくいろいろと仕掛けてあるのだが。しかし、一度扉をくぐれば普通に危険地帯だ。そこここに脱出路や避難ポッドはあるが、そこに入れないうちにやられたらアウトである。一応、やられそうになったら、監視している誰かが助けに来てはくれるのだが。それでもこの施設で命を落とす候補生はたまにいる。
まあ油断しなきゃね、大丈夫なんだけど。
飛んできた巨大蝿型モンスターを拳銃で打ち落としながら、左手で素早く印を結ぶ。左に手をかざし、
「フゥ・オーコ!」
火球で左の群れを数対まとめて打ち落とし、後退。そこに飛びかかってきた虫型モンスターの、外殻の切れ目を狙って銃弾を撃ち込む。断末魔を聞きながら再装填。
拳銃を構えなおすと、辺りは静まっていた。どうやら一団は倒しきったらしい。どうも、敵全体をきちんと見きれていないのが私の難点である。これはジョンにもよく注意される。
「クリア」
誰にともなく、掃討完了をつぶやいて、私はさらに奥へと向かった。