ある日のこと、婚約者と私の妹が揃って現れて……? ~他者を傷つけるような人には幸せな未来はありません~
ある日のこと。
婚約者である二つ年上の彼ディオンが、私の妹であるミレニーを連れて、私の前へ現れた。
隣り合う二人の距離は不自然なほどに近くて。
普通考える二人の関係とは明らかに異なる、目にした瞬間それが分かるくらいの、いかにも仲良さげな空気を漂わせていた。
「アリサ、俺は君との婚約を破棄する」
「え……」
「そして君ではなく妹さん、つまり、ミレニーさんと婚約すると決めた」
ディオンが言えば、ミレニーは勝ち誇ったような顔でこちらを見てきた。
「お姉さまはもう要らない、ってことよ」
しかもそんなことまで言ってくる。
「ディオンさまが愛しているのはお姉さまではなくあたしなの。分かった? 分かったなら、さっさと去ってちょうだい」
「ミレニー……」
「何よ、その顔。あたし、奪ったわけじゃないから。勘違いして怨むとか、そういうのはやめてちょうだいよ? そもそも、お姉さまに魅力がなかったのが問題だから」
ミレニーはさりげなく幾つもの棘を吐き出してきた。
「これからは俺とミレニーの幸せを願ってくれ。……ではな、アリサ」
私と彼の婚約は、こうして、非常に雑な形で破棄となってしまったのだった。
◆
両親は私の味方をしてくれた。
父も、母も、姉の婚約者を奪い取った妹を許さなかった。
結果、ミレニーは両親から勘当を言い渡され、家から追放されることとなった。
「アリサ……もっと早く気づくべきだった、申し訳なかった」
「そんな。いいのよ父さん。気にしないで」
「わたしも後悔しているわ。厳しく見張っていればこんなことにはならなかったかもしれなかったのに……って。母として足りていなかったわ」
「母さんは悪くないから、本当に」
家から出ていかされる時、ミレニーは「お父さまも、お母さまも、騙されてるのよ!」「悪いのはお姉さまなの! 全部! お姉さまが魅力的でなかったことが悪かったの!」などと大声で言っていたけれど……でも、そんなものは無意味な行為だった。
すべてを知ったその後で、彼女の味方をする者などいない。
「アリサ、お前だけが我が娘だ」
「父さん……」
「お前の幸せのために、できる限りのことをするからな」
「ありがとう」
ディオンは失ってしまったけれど、それは人生の終焉ではない。
希望は死なない。
闇の中でも。
どんな暗闇にあっても、いつか必ず、一筋の光は降り注ぐ。
ちなみにミレニーはというと、あの後少ししてディオンと揉め彼からも捨てられてしまい、居場所を完全に失ってしまったようだ。
そんな絶望の中で、怪しい仕事を斡旋してくる人に出会い、社会の闇に堕ちていったようである。
……その後の彼女を知る者はいない。
だが、彼女の未来には、穏やかな幸福はなかっただろう。
ただそれも相応しい結末なのだ。
他者を傷つけた者の末路。
つまりは単なる自業自得というやつである。
◆
あれから三年ほどが経った。
先日結婚式を挙げた。
相手は、父の会社の知り合いの人からの紹介で知り合った男性。
出会いから現在に至るまで、ドラマチックなことなんてなかったけれど、堅実に関係を築き上げてきた。
彼は信頼できる人。
正直で、真っ直ぐで、綺麗な心を持っている。
だからこそこれからもずっと彼の隣を歩いていきたいと思えているのだろう。
……ああ、そういえば、だが。
あの時私を裏切り傷つけたディオンは結局幸せにはなれなかったようだ。
ミレニーと破局した後も、婚約しては勝手な理由で婚約破棄するといったことを繰り返していたようで、やがてそれが問題視されるようになり社会的な評判がとてつもなく悪くなっていってしまったよう。
そんな状況に悩んでいた時、酒場で出会った一人の女性に優しくしてもらえたことからその女性に惚れてしまい、高額な品を貢がされることとなってしまって。
気づけば持っていたお金はほとんどなくなり、借金まで重なっていて……生きていくことに希望を見出だせない、ということで、ある日の晩いきなり自ら命を絶ったそうだ。
◆終わり◆




