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コネクトワールド~俺の脳内異世界が最強すぎるし、次々に進化していっておかしい~1巻完結  作者: 阿良あらと
第四章『VS伊集院透夜、そして』

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第29話


 大陸と大陸、異世界と異世界を繋いだ奇妙な仮想空間。

 小さくもあり無限でもある真っ白な大地。


 その中心に立つ一人の少女、ハーフエルフ。

 右手に召還した世界樹の枝は先端に大きな宝玉が埋められている。


「これは私が最も信頼し、最も長く一緒に戦った白銀の龍から授かった魔力の心臓(マナハート)


 蒼を基調とした軍服に身を包み白銀のマントを纏う姿は、かつて俺が最後の最後まで追いかけた英雄の姿そのものだった。


「いくらネームドだからって、英霊一人くらいで俺達を倒せると思うなよ」


 男達はそれぞれが神器を取り出す。

 それは剣だったり銃だったり、はたまた杖だったりするが、確かにどれも巨大な力を放っていた。


「貴方達と、あるいは別の世界で戦ったなら私にも負けの未来はあったかもしれない」


 ミストが杖をゆっくりと水平に振ると、時空の裂け目から数千本の杖が現れる。

 それらは各々の先端に付けられた宝玉が紅だったり蒼だったり様々に輝いていて、その全てが魔術を発動しようとしていることに皆が気づいた時、男が叫んだ。


「や、やめろ! この人質がどうなっても―――」


 焦りを見せていた男が口をあんぐりと開けたまま固まってしまった。


「私達の時代では魔術を発動した瞬間には対抗魔術、もしくは反射魔術を発動させなければ死んでいました」


 コツコツ、と白い大地にミストの足音が響く。

 その足取りは非常に緩やかだったが、男達に恐怖を植え付けるには十分だった。


「無辜の民はミストガルドで受け入れます」


 ミストが左手を前に向けると、捕まっていた奴隷達が次々に別の場所へ転移していく。

 抗えない力に恐怖したのか、高飛車な女性が悲鳴を上げながら伊集院の元へと近寄った。


「こ、これは、状況が最悪だった時に使えって言われていたけど……」

「おい! それを使えば俺達の任務は失敗にされるぞ!?」

「だからって!! あんなバケモノに勝てるわけないじゃない!」


 ぐうの音も出なかったのか、男達は彼女の行動を止める事はなかった。


「ふ、ふふふっ、心の境界線を失った人間に〝全く別の境界線を与えたら”、どうなると思う?」


 ブスッと、女性は伊集院の首元、生体デバイスに注射器を刺した。


「……あっ!? ガッ、グッ!?」

「伊集院先輩!?」


 伊集院の身体に緑色に光る文字が走る。

 何かのプログラムが無防備に倒れているだけの少年に適応されていく。


 注射器の中身は明らかに良いモノとは思えなかったが、それを止めなかったミストを俺は責めたりはしない。


 伊集院透夜は何があっても自分の行動の責任を取るべきで。


「グガガガガゴッ! ガッ」


 例え彼自身が最も嫌悪していた()()()()()()になったとしても。


「なるほど。心の境界を書き換え、〝自分自身をエネルギーの塊”と認識させたのですか」


 伊集院透夜は仮想空間において最早、人とは呼べない存在へと変化していた。

 マグマのようなドロドロとした液体、その色はどす黒く変色しており、時々暗い光を発していた。


「そうよ! コネクト内において心の力はエネルギーそのもの! そしてこれは私達にだけ使える無限のエネルギーとなった!」


 伊集院だったモノから暗い光が彼らの身体に降り注ぐ。

 ミストから感じた以上の力が一人一人から感じ取れた。


「コネクトって今すぐ開発中止にすべき危険なシステムじゃね?」


 俺の純粋な疑問に、ガリガリの男が即答した。


「ばーーーーか!! コネクトが無くたって戦争は終わらないし、俺達は別の方法で犯罪者になっていただけだよ!」

「これだからガキは困るのよ。手元に包丁が無かったらハサミを使えばいいじゃない!」

「俺はコネクトと出会う前から暴力が大好きだったのさ!」


 口々に犯罪自慢を始める彼らに憐みの余地はない。

 心臓の鼓動が激しくなる。


「兄さん、俺も同じ気持ちだよ」


 俺は胸に手を当て、彼らをどうするべきか覚悟を決めた。


 伊集院透夜は許されざる事をしたが、彼らとは違う。

 コネクトが無ければ犯罪者にはならなかったかもしれない。


「伊集院透夜、聞こえているか?」


 俺はエネルギーの塊に問いかける。

 男達は馬鹿にして笑っていたが、俺にはどうでも良い事だった。


「お前は醜さを憎み、奇麗なモノで世界を埋めようとした。だが、本当にそうか?」


 ブゥンと、怯えるように伊集院だったモノは暗い光を強く発した。


「本当は〝自分より美しいモノを置いて、自分が取るに足らない存在になりたかった”んじゃないのか?」


 球体だった液体がぐにょぐにょと不定形に歪み始めた。

 

 伊集院透夜が美沙に固執した理由。

 それは他の王妃とは違い、彼女一人で伊集院透夜の美しさを凌駕していたから。


「美沙が隣にいるだけでお前は誰からも注目されなくなる! 王妃も加えれば誰からも見向きされないかもしれない!」


 ――や、やめ……ろ。


 伊集院透夜の声が世界に響く。

 それは自信に満ちた今までの彼とは明らかに違う、怯えた声色。


「静かに、ただ静かに暮らしたかった! それが伊集院透夜、お前の願いだ!」


 ――うる……さ、い。だま…れ。


「いいや黙らない! お前の本当の願いは――」


 瞬間、伊集院透夜だったモノは強い輝きを放ち、元の人の姿へと戻っていく。


「なっ!? 自力で自我を取り戻したというの!?」

「あり得ない! それじゃあまるで……奇跡…」


 騒ぎ立てる男達の口をミストが魔術で黙らせる。


「先輩の願いは篠田翔子先輩と穏やかに暮らすこと、なんでしょう?」

「………ずっと、ずっと虐められていたんだ。僕が他人より顔が整っていた、それだけで」


 伊集院透夜の口から語られる悲劇の連鎖。

 誰とも違うという理由で拒絶され、攻撃され、汚されてきた。

 時が経ち、誰とも違う理由で称賛され、求められ、汚されてきた。


 プラスとマイナス。

 どちらの方向にも否定されてきた伊集院透夜という存在。


 それは心を殺すに等しい行為だった。


「そんな中、翔子だけは僕の中身を見てくれた。外見なんて関係ないと、一緒にいてくれた」


 だが篠田先輩の容姿が普通だっただけで、女子生徒は彼女を拒絶した。

 伊集院透夜の存在を汚す存在だと、〝また勝手に決めつけて”攻撃した。


「僕はただ静かに暮らしたいだけなんだ。だけど誰も僕の願いなんて聞いちゃくれない。だから顔の良い女子を王妃と呼んで自分を隠そうとした」


 それでも伊集院透夜の美しさを満たすに足りなかったようで。

 勝手にできたファンクラブの女子達が篠田先輩の悪口や嘘の噂話を学校中に蔓延させたらしい。


「僕は強さで解決しようとした。だが、限界はあった。むしろ手に入れた中途半端な強さが僕の平穏を邪魔するようになった」


 そんな中、東雲美沙という圧倒的な美の象徴が現れた。


「東雲美沙なら僕の居場所を奪い去って美の頂点に立てる。そうすれば僕なんて東雲美沙のおまけとなる。それだけが僕の望みだったのに……っ」


 伊集院は両膝を着くと、絶望の表情で最後の言葉を紡いだ。


「僕自身が最も憎んだ〝美しさを元に良し悪しを決める人間”になっていたなんて、今の今まで気づかなかったよ」


 東雲美沙の美しさを自分勝手に査定し、決めつけ、手に入れようとした。

 それはかつて伊集院透夜の人生を壊した子ども達と全く同じ行動だった。


「なんて、なんて僕は愚かなことを……」

「伊集院先輩、あんたは本当に自分のした行為を悔やんでいるか?」

「ああ、だが、もう彼女達の世界は帰ってこない……」


 篠田先輩以外の四つの異世界。

 伊集院透夜の異世界を通じて壊された鹿島玲衣、飯島涼香、貝塚藍。

 そして自ら異世界を破壊した細田朱美。


「全部を元通りって訳じゃないが、少しだけなら見せてやれるかもしれないな」

「見せて……何を?」


 呆然とする伊集院に対し、俺は力強く笑みを浮かべる。


「そりゃ――奇跡ってやつを、さ」


 そして俺は召還する。

 円環の理、全ての始まりにして終わり、世界の淵であり歴史の淵でもある太古の龍。


()()()()古代龍(ウロボロス)


 ミストガルドが――揺れた。


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