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コネクトワールド~俺の脳内異世界が最強すぎるし、次々に進化していっておかしい~1巻完結  作者: 阿良あらと
第三章『終末戦争とランキング戦』

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幕間1~僕の心~


 小さい頃、僕はいつもイジめられていた。


 ぱっちりとした二重や、スッと通った鼻筋。

 子供の世界で僕は“普通”ではなく、目立ちすぎた。

 物心ついたばかりの彼らにとって、自分たちとは違うモノはイコール“悪”であり、無邪気な攻撃の対象だったのだ。


「とうやくん大丈夫?」


 そんな中、篠田翔子だけは僕を差別しなかった。

 いつもいつも、当たり前のように手を差し伸べてくれた。

 靴を隠されれば一緒に探してくれたし、机を汚されれば一緒に掃除をしてくれた。


 見た目も中身も、ごく普通の彼女がどうして僕の味方をしてくれたのか。

 それは、今でも分からない謎だ。


 成長するにつれて僕に対する女子の評価は変わっていった。

 美醜の区別がつき、普通ではないことが必ずしも悪ではないと気づいたのだ。

 彼女達は僕の“美しさ”に気づくと、今までのことはなかったかのように僕に擦り寄ってきた。


 心の底から気持ち悪いと思っていた。

 だが敵にするよりは味方にした方が良い。

 僕は彼女達を受け入れていった。


 それでも僕にとって女子は「篠田翔子」と「それ以外」でしかなかった。

 翔子に対して恋愛感情は一切ない。


 彼女は僕が最も大切にすべき“宝物”だ。

 彼女の価値は世界に拒絶された僕だけが知っていれば良い。


 ◇


 中学生になると、男子も女子も価値観が完全に逆転した。

 彼らは特別で美しいモノこそ“善”であり、平凡は“悪”、醜さは“もっと悪”だと信じて疑わなくなった。


 僕に媚びへつらい、その裏で不細工なクラスメイトを虐めるようになった。


(――死ぬほど反吐が出る)


 彼らが何事もなかったかのように捨て去ったその価値観。

 錆びだらけの鉄パイプのような悍ましい何か。


 僕の魂は細部まで深く、深く傷つけられた。


 身体の怪我と違って、その傷は二度と治ることはない。

 せいぜい隠すくらいしかできなかった。


 人気絶頂のまま高校生になった僕は、「コネクト」と出会った。

 心の中に異世界を創り、育て、評価されるシステム。


(こんな僕の心でまともな異世界が創れるだろうか……)


 だが結果は想像とは違っていた。


 目の前に広がっていたのは澄み切った湖と、一面に咲き誇る真っ赤な薔薇。


(そうか、そうだったのか。――“美しさ”こそが、この世の全てなのだ)


 僕は傷だらけの古い心を脱ぎ捨て、ピカピカに磨かれた新しい心を羽織った。


 湖を覗き込んでも僕の姿は映らなかった。

 創造主は世界には映らないのだろう。


 僕は、そう結論付けた。


 ◇


 コネクトの授業を受け始めて半年。

 僕の異世界は白銀の鎧に身を包んだ「白銀の騎士」が活躍する、美しい世界を目指した。


 そして僕の美しい世界に足りないのは、美しい異世界との接続だと気づいた。


 僕は学校中の女子生徒を美醜で評価し、僕が「美しい」と認めた生徒とだけコネクトを繰り返していった。


 彼女達を“王妃”と呼び、美しさの極致を目指した。

 幸いだったのは翔子の容姿が「平均以上」はあったことだ。

 僕の美学にギリギリ許容される範囲。


 さらに嬉しかったのは優しい彼女にぴったりな、心の安らぐ世界を創造していた事だ。

 

 ◇


 さらに数か月後。

 ランカーとなり僕の存在は唯一無二となった。


 そして運命の出会いは訪れた。


「……美しい」


 新入生の中に、僕が視線を外せないほど、完璧に美しい少女がいた。


(東雲美沙。君こそ僕の“本当の王妃”に相応しい)


 確信した。

 美しいことは絶対であり、正しいことなのだ。

 これは、この世界が定めた運命であり『祝福』だ。


「――さぁ、僕に感謝し、この手を取るがいい!」


 二人で美しさを極め、誰もが羨む至高の異世界を創り上げていくのだ。


「先輩、コネクトの無理強いは法律で禁止されているって聞きました」


 突然現れたのはモブの一人。

 東雲美沙と一緒にいただけの、少しだけ見た目の良い男子生徒。


(僕の方が、先に見つけたんだぞ……!)


 この男子生徒が許せなかった。


 美しい存在は無価値な者に触れられるだけで、その魂が傷つく。

 その傷は目に見えなくとも心に残り、いつまでも、いつまでも魂を苦しませるのだ。


 僕がそうだったように。


 東雲美沙はこんなモブと一緒にいてはいけない。

 僕といる方が彼女のためなのだ。


 だから、僕は手を伸ばした。


「……嫌っ!」


 東雲美沙に拒絶され動揺した。

 その時、僕の首元に木刀が伸びてきた。


「また貴様か。伊集院」


 波風蓮華。

 僕が知る限り、この学園で僕より“美しい”人間がいるとすれば、それは彼女だけだ。

 本気を出した彼女の美しさには、東雲美沙ですら及ばないかもしれない。


(だが君は去年の春、その美しさを捨てた。幼馴染の死が君の魂を狂わせてしまった)


 傷と傷が噛み合って、傷口が開いてしまう。

 それを恐れたのだろうか。僕は彼女とコネクトしようとは一度も思わなかった。


「えっ、蓮華姉さん?」

 

 先程のモブが、波風蓮華の名前を呼んだ。

 そして彼女が、その少年の顔を認識した瞬間。


(……!? なんだ、その顔は!?)


「みみみ、見るなぁああああっ!」


 顔を真っ赤にして動揺し、狼狽える波風蓮華。

 完璧に整った彼女の顔がくしゃくしゃに崩れ、額には汗が滲んでいる。


 僕が知る彼女の“本気”とは真逆の顔。

 だというのに――。


(――人間は、こんなにも、美しい表情ができるのか……!?)


 僕は知らなかった。

 感情の奔流に乗った、不格好で普通ではない表情。これほどまでに人の心を揺さぶり、美しいということを。


 いつも無表情で僕の顔色を窺う王妃達が、一度も見せたことのない表情。


「君の名前を教えたまえ」

「神代アキラです」


「神代アキラ。――君は、僕を敵に回したようだ」


 それは嘘でも冗談でもない心からの怒り。

 脱ぎ捨てたはずの傷だらけの古い魂が、再び僕の表層に現れる。


 君にだけは絶対に、絶対に絶対に。

 負ける訳には、いかないようだ。


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