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コネクトワールド~俺の脳内異世界が最強すぎるし、次々に進化していっておかしい~1巻完結  作者: 阿良あらと
第三章『終末戦争とランキング戦』

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第22話


 伊集院透夜という明確な脅威。



 美沙を護る手っ取り早い方法が一つある。

 俺が美沙の異世界とコネクトすることだ。


「あの手の男は他人の男とコネクトした異世界を毛嫌いする傾向にあるからな。その考えは正しいだろう」


 蓮華もまた、多くの男子生徒から言い寄られた経験があるらしい。しかし、彼女が桜ノ島コネクトと契約をして、プロラグナロクプレイヤーの異世界とコネクトしたと分かった途端。全くと言っていいほど声をかけられなくなったという。


「特に自分より格上の同性に手を付けられていると感じるとやる気を失うらしいな。全く、男というのは困った奴らだ」


 俺も男なんですけど。という反論は胸の奥に隠し、俺と美沙は蓮華の部屋で相互接続を試みる。

 彼女の異世界は「桃源郷」という最高位の属性を持ち、愛らしい妖精たちが住んでいる。

 可能性に満ちた素晴らしい世界だ。


 だが――。


『警告:ワールドレベルに著しい差が存在するため相互認識に失敗しました。コネクトを実行できません』


 結果は前回と似たようなものだった。


 今のミストガルドと生まれたばかりの美沙の世界では、格が違いすぎるらしい。

 今回は倭国と同じように、彼女の世界をダンジョンの一部として繋げる方法も提案された。

 しかしそれは、美沙の世界を危険に晒すことと同義だ。


「ごめん、東雲さん。やっぱり今はまだ無理みたいだ」

「ううん、私の頑張りが足りないだけだから……」


 落ち込む美沙を見て、話を聞いていた蓮華がポンと手を叩いた。


「ならば美沙殿のコネクト相手として、才能ある男子生徒を紹介してやろう」

「え?」

「ランキングこそ115位だが、面白い男がいる。二年の小鳥遊(たかなし)はじめ。彼の異世界は独特だが会ってみる価値はあるぞ。特に、妖精の世界を持つ君ならな」


 蓮華はそう言うと、すぐに小鳥遊先輩へ連絡を取ってくれた。


 ◇


 翌日の放課後。

 俺達が屋上へ向かうと、そこにはとても二年生とは思えない――いや、高校生とさえ思えないほど幼い容姿の男子生徒が、緊張した面持ちで待っていた。


「か、かかか、神代君! し、東雲さん! じ、自分は、小鳥遊は、はじめと申します! よろしくお願いします!」


 九十度の角度で深々と頭を下げる小鳥遊先輩。

 俺たちも慌てて同じくらい頭を下げた。


「さ、さっそくだけど」


 顔を上げた彼は、少しだけ寂しそうに笑った。


「僕の異世界は少し変わっててね。今まで誰もコネクトしてくれなかったんだ。だから君達が興味を持ってくれて本当に嬉しいよ!」


 俺達三人は、絡み合うように互いの生体デバイスにそっと触れ合った。

 三人以上でコネクトする際は専用の機械を使うのが早くて安全だが、誰にもバレずに話を進めたかった。


 仮想空間へと意識を飛ばされた俺達は、まずお互いの世界を紹介し合った。


 俺の異世界は「崩壊して更地に戻った、発展途中の世界」だと説明した。

 いくら蓮華の紹介とはいえ、この段階で全てを話すほどお人好しではない。


 美沙も可愛らしい妖精が住む世界を紹介し、いよいよ小鳥遊先輩の世界を見る番となった。


「ぼ、僕の異世界は、少し、少しだけ刺激が強いけど……でも、それほど怖くないから、ね」

「「怖くない?」」


 俺と美沙は思わず首をかしげた。

 だがその答えは、すぐに知ることとなる。


 仮コネクトのカメラ機能を使い、俺達の意識は小鳥遊先輩の世界へと召喚された。


 視界が広がっていく。

 俺は小鳥遊先輩の言葉の真意、つまりここがどんな場所かすぐに理解した。


 どこまでも廃墟の街が広がるゴーストタウン。

 和風だったり、洋風だったり、現代風だったり、中世風だったり。

 ありとあらゆる時代の崩れた建物で溢れかえっている。

 冷たい空気が世界を支配し、人と呼べる存在はどこにもいない。



 代わりにいたのは――無数の、半透明の“お化け”だった。



「僕の異世界は“死後の世界”さ。お化けや妖怪、海外のゴーストで溢れる最高の世界なんだ!」


 先程までのおどおどした態度はどこへやら。

 自信に満ちた先輩らしい先輩が、誇らしげに胸を張っていた。


「これは、確かに……独特だな」


 俺が苦笑いを浮かべながら、隣の美沙を見る。


「……えっ!?」

「     」


 そこには白目を剥いて硬直している美少女の姿があった。


「……もしかして、東雲さん、怖いの苦手なのか?」


 意識の塊である俺は美沙に干渉する事はできない。

 異世界の神である小鳥遊先輩でも同じこと。


「う、うーん……」


 しばらく待っていると、か細い声をあげて美沙が目を覚ました。

 刺激を与えないよう、俺は自分の意識で彼女の視界を覆い隠してやる。


「東雲さん、お化け苦手なのか?」

「うぅ……ごめんなさい…」


 申し訳なさそうに答える美沙を見て、小鳥遊先輩は優しく提案してくれた。


「いったんここから離れて、話をしよう」


 ◇


 仮想空間から意識を引き上げ、俺達は屋上の現実へと戻ってきた。


「うぅ……恥ずかしいよぉ……」


 我に返った美沙が顔を真っ赤にしてその場にしゃがみ込んでしまう。


 美少女にホラー耐性ゼロという属性がつくのは、むしろプラス要素でしかないと思うが。

 俺がそうフォローを入れると彼女はガバッと顔を上げ、俺の腕を全力で掴んできた。


「ほんと!? 本当に幻滅しなかった!?」


 涙目の上目遣いで確認してくる彼女に、俺はぶんぶんと首がもげる勢いで頷いた。


 一方で小鳥遊先輩は現実に戻った途端、自信に満ちた態度は消え去り、最初の暗い雰囲気に逆戻りしていた。


「ご、ごめんね。最初にちゃんと、せ、説明しておくべきだった……」


 深々と頭を下げる小鳥遊先輩。

 この人の一体どの部分から、あんな禍々しい異世界が生まれたのだろうか。


 美沙が静かに、だがしっかりと自身のトラウマを語り始める。


「実は私のお父さんの異世界も、お化けがたくさんいる世界で……。子供の頃、心霊写真を何度も見せられたんです」


 父親からすれば自慢の世界を見せたかっただけなのだろう。

 だが相手は現実と妄想の区別が曖昧な子供。

 コネクトを理解していない子供からすれば、現実の世界にお化けがいると勘違いしてもおかしくない。


 結果として、愛娘に強烈なトラウマを植え付けただけと言える。


「自分勝手なトラウマで、先輩の異世界を否定して申し訳ないです…」 

「ファンタジーの住人も、お化けも、同じ空想上の存在のはずなんだけど……し、死の世界に近いっていうだけで、怖がる人が多くて……」

「確かに魔物としてゴーストが出てきたら、あんまり怖くないかもしれないですね」


 俺はホラーに苦手意識を持ったことはないが、彼らの感情の起伏は理解できる。

 死の向こう側へ旅立ったにも関わらず、生に執着し続ける存在。

 何を考え、何のためにそこにいるのか理解できないからこそ、人は恐怖するのだろう。


(……………ん?)


 ふと、何かがこみ上げてくる。


「……は、はははっ、くっ、あはははっ!」


 俺は何故か笑いが止まらなくなった。

 驚いた二人がぽかんとした顔でこちらを見ている。

 美沙にいたっては「やっぱり、引いちゃったんだ……!?」と、ショックを受けていた。


「ああ、いや、ごめん。……ただ、面白いなって。俺たち三人、現実の見た目は普通の高校生なのに、心の中は全然違う世界が広がってるんだなって思ったら、なんだかおかしくて」


 見た目通り、美しく可愛らしい世界を創っている人もいれば。

 気弱で大人しいのに、誰よりも恐ろしく禍々しい世界を創っている人もいる。

 心の在り方なんて、本当に自由で良いんだ。

 皆と出会って、俺は心の底からそう思えた。


「か、神代くんって、凄い人だね。波風先輩が絶賛するのも、少しだけ理解できたかも」

「……うん。私も、“アキラくん”のおかげで、決心できた」


 美沙は力強く頷くと、もう一度コネクトをしたいと小鳥遊先輩に願い出た。


 今度は、二人だけで。

 しばらくしてコネクトを終えた美沙が、満面の笑みでこちらに駆け寄ってきた。


「私の世界の妖精さんと、小鳥遊先輩の世界の妖怪さんが仲良くなってくれたよ!」


 嬉しそうに報告する彼女を見て、小鳥遊先輩に少しだけ嫉妬してしまった。

 親友が別の友達と映画を見に行ったみたいな、小さな悔しさ。


(いつの間にか美沙の存在がこんなにも大きくなってたんだな……)


 親友に見限られないように、俺はもっと強くなる決意をしたのだった。


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