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コネクトワールド~俺の脳内異世界が最強すぎるし、次々に進化していっておかしい~1巻完結  作者: 阿良あらと
第二章『世界の崩壊、そして――』

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第16話


 俺と蓮華姉さんは、仮想空間に映し出された二つの世界の接続エリアを眺めていた。


 ミストガルドの中央ダンジョン地下23階層と、倭国の霧鉢山脈禁則地。

 まずはこの危険な接続エリアを直接、目視で確認しておく必要がある。

 俺がそう思っていると、隣に控えていたミストが静かに意見を述べた。


「我が主。あのダンジョンが世界樹の残骸であり、その最奥に接続部が存在するのであれば、向こう数千年は、ミストガルドの冒険者には到達不可能かと存じます」


 あの苛烈な戦争期を生き抜いた彼女だからこそ言える、重みのある意見だった。

 俺と蓮華姉さんは素直にその言葉に納得した。


 しかし、俺たちが今いるこの場所から「降神」できる範囲は決まっており、ミストガルドの地上までは届かないようだった。


「でしたら、ダンジョンの地下五階の引退した冒険者達が作った集落はいかがでしょう? 人口は数百人しかおりませんが、冒険者ギルドも存在します。主様たちが私たちの身体を使い、冒険者として情報を集めるのが良いかと」


 その提案に、蓮華の目がカッと輝いた。

 その瞳に映る俺もまた、きっと同じ表情をしていただろう。


『中央ダンジョン地下五階〝お前達の為の村”に転移します』


 ウィンドウが表示され、俺たちの視界は真っ白な光に包まれた。


―――――――――――――――――


「お、おお? おおお?」


 仮コネクトで創られたシミュレーションの世界。

 その村の一角に転移した俺は、自分の視線がいつもより低くなっていることに気づいた。


 サラリとした金色の髪が、腕を撫でる。

 感覚を集中させると、長耳がピクピクと動くのが分かった。

 両手を視界に入れると、そこには白く美しい指と、小さな手が現れた。

 そのまま自分の胸に手を持って行こうとした、その瞬間。


 その手を、誰かにピシャリと叩かれた。


「アキラ。気持ちは分かるが、我慢しなさい」


 声のした方を見上げると、そこには屈強な侍の姿があった。

 袴から覗く分厚い胸筋が、ピクピクと動きながら喋っている。

 どうやら俺の背が縮み、蓮華の背が伸びたらしい。


「収納魔術、手鏡」


 エルフの秘術で空間から手鏡を召喚する。

 ミストが戦争の合間に様々な武器や生活用品を異空間に収納していたのを、俺は知っている。


「お、おぉっ!  お、俺がミストになってる!」


 手鏡に映るのはこの世の物とは思えないほど均整の取れた、美少女の顔。

 降神したら自分の身体に変化してしまうのではないかと思ったが、それは杞憂だったようだ。


「どうやら、レベルや装備はこの世界の平均値に合わせて調整されたようだな。あくまで視察、ということか」


 蓮華姉さんが指摘する通り、俺の装備はミストが最後に着ていた「世界樹の戦闘服」ではなかった。

 普通の冒険者でも購入できる、革鎧に弓矢と二振りの短剣。

 蓮華も、一本の長刀を腰に差しているだけだ。


『ステータスは、このエリアの平均値より少しだけ高く設定されています。どちらかが死亡した場合、シミュレーションは強制的に終了します』


「俺の装備は弓矢と二対の短剣か。蓮華姉さんは一本の長刀だな」

「前々から言おうと思っていたが、私を呼ぶのに“姉さん”は不要だ。君は最早、私と肩を並べる一流の異世界保有者なのだからな」

「……分かった、蓮華」


 本音を曝け出し、さらにコネクトしたことで俺達の絆は強まった気がする。

 蓮華が兄さんを今でも好きだとハッキリしたことで、異性という関係から、親友、あるいは“戦友”と呼べる関係に変化できたのかもしれない。


 俺達はまず、冒険者ギルドへと向かった。

 道中、何人かの村人とすれ違った。

 流石は引退した冒険者で構成されている村なだけあって、誰もが一筋縄ではいかない風格を漂わせている。


「冒険者ギルド、“お前達の村”出張所へようこそ! わぁ、貴方たち、ハーフエルフと異世界人ね! 初めて見たわ!」


 ギルドの受付嬢が、両手を合わせて感嘆の声を漏らした。

 隣接された酒場にいた冒険者たちが、一斉にこちらを見る。


「し、失礼しました。冒険者カードはお持ちですか?」


 受付嬢の質問に蓮華は首を傾げた。

 俺は収納魔術でミストのカードを探ってみると、空間の奥深く、一枚だけ古びたカードが眠っているのを探知した。


「これ、かな?」


 それはミスリルで出来た美しい装飾のカードだった。


「いえ、これは私の知っているカードでは……」


 受付嬢が怪訝そうな顔でこちらを見ていると、奥の部屋から体格の良い老人が慌てて走り込んできた。


「そ、そそそ、それは!? 何故お前のような若造が、それを持っているのだ!?」


 老人は、カードを舐めんばかりの勢いで俺の顔に自分の顔を近づけた。


「ギルド長!?」


 受付嬢の叫びに、酒場の冒険者たちが再びこちらを向く。


「おい、あれは伝説のパーティ“疾風迅雷”のライじゃねぇか」

「S級冒険者が、なんでこんな辺鄙なギルドの長なんかやってるんだ?」


 価値を知らない俺達は素直に老人に尋ねた。


「このカードは、そんなに珍しいんでしょうか?」


 俺が恐る恐る質問すると、ライと呼ばれたギルド長は我を取り戻したのか、コホンと咳ばらいをして、一言だけ言った。


「……奥の部屋へ、どうぞ」


 ◇


「先ほどは取り乱してしまい、申し訳なかった」

 

 差し出された紅茶を一口飲む。

 それはかつて俺がミストに飲ませてやった紅茶と、よく似た味がした。

 俺の記憶がこの世界の飲食物に影響しているのだろうか。


「このカードはギルド長である貴方が取り乱すほど、貴重な物なのか?」


 蓮華の問いに、ライは静かに頷いた。


「それは、一部の者しかその存在を知らぬ“前時代”――つまり、エルフのいた時代の身分証。言い換えれば、“この世に存在するはずのないアイテム”なのだ」


 ミスト自身がこの時代には存在していないのだから、彼女の持ち物が遺物であるのは当然のことだった。

 俺たちは神であることは伏せたまま、「このダンジョンを調査しに来た、高位の存在である」とだけ説明した。


「なるほど……このダンジョンだけ、妙に難易度が高いと思っていましたが、まさか世界樹が変異したものだったとは……」


 ライは、悔しそうに顔を歪める。


「そのことを知っていれば、“疾風迅雷”も、解散することはなかっただろうに!」


 ダン!と机を叩き、ハッとした表情で「も、申し訳ありません!」と深く頭を下げた。


 俺たちは笑顔で彼を許し、ギルドを後にする。


「これが仮コネクトでなければ、あの“疾風迅雷”の未来も変わったのかな」

「そうかもしれんな。だが、アッサリとダンジョンに殺される可能性だってある」


 村の出入り口。

 蓮華の言葉を証明するかのように、一体の強力な魔物が俺たちを待ち構えていた。


 それはかつて、俺が創り出した狼の一族の末裔。

 薄暗いダンジョンに隠れるように黒い体毛を持つ、巨大な狼――黒狼だった。

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