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コネクトワールド~俺の脳内異世界が最強すぎるし、次々に進化していっておかしい~1巻完結  作者: 阿良あらと
第二章『世界の崩壊、そして――』

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第12話


 ミストは使徒として全く予想外な展開を見せた。


「地球文明最高です!」


 仮想空間にミスト専用の部屋を用意し、地球産の家具や電化製品を召還した。彼女は漫画やアニメ、ゲームに興味を示し、またコネクトシステム自体にも強い関心を持った。


「一緒に最高の世界を作りましょうね! 主様!」

「ああ、だけど基本的には今まで通り傍観だけどね」


 俺達はミストガルドに新たな歴史が紡がれていくのを見守っていた。


 英雄ミストが命を懸けて護り抜いた世界。

 だが、尊い犠牲の上に訪れた平和は、新たな“歪み”を生み出していた。


 多くのエルフが去り、マナを糧としていた精霊たちが姿を消した世界。


 それは〝淀んだ魔力の瘴気を浄化する存在がいなくなった”ことを意味していた。


 世界に満ち始めた瘴気は、生物に悪影響を及ぼし始める。

 森の奥深くで瘴気に中てられた動物の一部が、凶暴な「魔物」へと姿を変えていったのだ。


 そして、もう一つの大きな変化が、大地の底で起きていた。

.

 魔導工学という大きな力を失った人類は、再び剣を取り、魔法を学び始めた。

 ダークエルフが遺した偽りの知恵ではなく、自分たちの力で未来を切り拓くために。


 そんな中、世界に決定的な転換期が訪れる。


 大陸の中央、枯れた世界樹がダンジョン化した「中央ダンジョン」の最深部。

 過去に最も近い場所で旧時代の遺産――人類の魔導工学の一部である「生物管理システム」が、再起動したのだ。


 システムから放たれた光が世界全体を包み込む。

 ミストガルドに住む全ての知恵ある生物の前に、半透明のウィンドウが現れた。


【“ウィンドウ・システム”が全世界に適応されました】

【“ステータス可視化(魔力・体力など)”が適応されました】

【“職業によるスキル支援システム”が適応されました】


 突如として世界に現れた、ゲームのようなシステム。

 人類は神のいる空ではなく、富と名声が眠る“地下”を目指し始めた。

 ダンジョンに潜り、魔物を狩り、そこで得た素材や魔石で生計を立てる者たち。


 人々は、彼らをこう呼んだ。

 ――冒険者、と。



 かつて世界の存亡を賭けて、種族と種族が争った苛烈な時代に比べれば、今の時代はまるで子供のお遊びのように、小さく、穏やかに見えた。


 だが、それでも。

 懸命に自分の足で立ち、未来へと歩み始めた我が子らの姿は、どこまでも愛おしかった。


 隣で静かに世界を見守っていた俺とミストは、奇しくも全く同じ言葉を、同時に口にした。


『――冒険者に、幸あれ』


 ◇


 ミストガルドの新たな門出を見届けた俺は、これからの計画を立てるため、一度意識を現実へと戻すことにした。


 蓮華姉さんの部屋のベッドから身を起こすと、窓の外はすっかり白み始めている。

 どうやら、かなりの時間が経過していたようだ。リビングへ向かうと、ソファでうたた寝をしていた蓮華姉さんと美沙が、物音に気づいて目を覚ました。


「おかえり、アキラ。どうだった?」

「色々、ありました。本当に色々……。でも、ひとまずの方針は決まりました」


 俺は二人に今までの事、そしてこれからの計画を伝える。


「黒田先生は、俺がまだ人類の発見すらしていないと思っています。その認識を利用します」

「ほう?」

「表向きは、『人類を発見したものの、文明が暴走して世界が崩壊。エルフも精霊もいなくなり、更地に戻ってしまった』ということにするつもりです」


 その計画を聞いて、蓮華姉さんは楽しそうに口の端を吊り上げた。


「なるほどな。崩壊して更地になった大地は、事情を知らない者からすれば『まだ何も手をつけていない大地』だと勘違いしてしまう訳か。……相変わらず、ずる賢さだけはカイトより高みにいるな、お前は!」


 蓮華姉さんの性格を知らない者なら、悪口にしか聞こえないであろう誉め言葉。俺は笑顔で受け流しながら、美沙の方へと向き直った。


「東雲さん。あの時の約束、覚えてるか?」

「え……?」

「俺と、“コネクト”してみないか?」


 実際は「仮コネクト」の約束だった気もするが、もうどうでもよかった。

 誠実で心優しい彼女相手なら、本物の異世界同士を繋げても何も問題は起こらないだろうという確信があった。


 それに、伊集院への牽制にもなる。


「確かに。あの愚か者は美沙殿が他の男とコネクトしたと知れば、諦める可能性は高いな」


 蓮華姉さんも、俺の意図を察して肯定してくれた。


「う、嬉しいけど……でも、私、まだ人類の発見すらできてなくて……。神代くんの迷惑に……」


 気恥ずかしそうに、美沙は俯いてしまう。


「迷惑なもんか。俺の世界は今、“更地”なんだ。一から一緒に創っていこう」


 俺が力強く言うと、彼女は「……うん!」と、満面の笑みで頷いてくれた。


 そしてコネクトを試みようと、俺と美沙が、お互いの首筋にある生体デバイスに指をあてた、その時だった。

 二人の網膜に、無機質なエラーメッセージが同時に表示された。


『警告:ワールドレベルに著しい差が存在するため、相互認識に失敗しました。コネクトを実行できません』


 しん、と三人の間に沈黙が流れる。


 つまりは、えーっと……あれだ。


(もしかして俺、また何かやっちゃいましたか?)


「ご、ごめんね、神代くん! 私が、私が弱すぎるから……っ」


 いち早く我に返った美沙が、涙目で頭を下げた。


「絶対に、絶対にいつか、神代くんとコネクトできるようになってみせるから!」


 そう前向きに宣言してくれる彼女は、本当に良い子すぎて、恋愛感情よりも庇護欲が勝ってしまう。

 少なくとも、伊集院の好きにさせてなるものか。

 俺が美沙を慰めようとした、その時だった。


「――ならば、私がアキラとコネクトを試みても、良いだろうか」


 なぜか顔を赤らめながら、すっと手を挙げる蓮華姉さんの姿が、そこにはあった。

 その仕草を見て、俺と美沙は、同時に同じ言葉を呟いていた。


「「可愛い」」


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