あの日
ワアアアアアアア!!!!
キャアアアアアアアア!!!
溢れんばかりの歓声と拍手がドーム内に波となって響き渡る
それもそのはず。
今をときめくバンドグループ『アルビレオ』のドームライブが今終わったのだ
何を隠そう
俺、星乃智影は『アルビレオ』のメンバーであり、今脚光と歓声を浴びている張本人なのだ。
「ありがとうございました!」
こっちの律儀に感謝をし続けているのはもう1人の鳴海凪だ。
ひとしきり歓声の波を浴び続けた俺たちは目配せをしあい、
「本日の公演はこれにて終了とさせていただきます!みんな!今日はきてくれて本当にありがとな!」
とライブを大盛況の中終わらせた。
興奮がおさまらないまま楽屋に向かうと、同じく興奮がおさまっていなさそうな凪がソワソワしながら俺を待っているかのように座っていたので声をかけに行った。
「よっ!お疲れさん」
「お疲れ様〜いやぁいくら舞台馴れしているとはいえ緊張したね」
「そりゃそうだろ!なんてったってドームだぞ、ドーム!」
「ははは、いまだに実感湧いてないけどね」
そう俺たち『アルビレオ』は夢であったドームでの単独ライブを成功させたのである。
そのおかげもあり、興奮が抜けきれていないのだ。
「いやぁ、一応夢達成しちゃったけどこれからどうする?」
「そりゃもう世界でしょ!welcome to sekai だよ!」
「なんやねん!うぇるかむとうせかいって!」
「いやぁ〜影には英語なんて難しいものわからないかぁ〜ごめんごめん」
「ちょっとこっち来な、二度と喋れなくしてやる」
「やだぁ〜影怖いw」
などと他愛もない会話をしていたその時
ドォーーーン
大きな爆発音がしたと共に、俺の身体がふわっと空中に持ち上げられ紙屑のように飛ばされた。
何が起きたのか分からずに戸惑っていた一瞬の間の後に、感じたことのないような灼熱で身体を覆われているかのような感覚に襲われる。
「かはっ、、、」
呼吸ができない。息が苦しい。身体が言うことを聞いてくれない。
全て経験したことがないような筆舌尽くし難い痛み、苦しみだ。
「ひぃ、、、、ひぃ、、、」
なんとか息をしようと努力するもうまく空気を吸えない。
目の前がぼんやりしてくる
(やばい、、、意識が、、、)
俺は、耐えることができずに意識を手放した、、、、
「ぅぅう、、、」
どれくらいの時間が経っただろうか
俺は、意識を取り戻した。
微かに動く目をこれでもかと開いて、周りの状況を確認した、、、いやしてしまった。
「え?何これ?」
脳が理解を拒んでいる。これが夢なのか現実なのかも判断できない。
そこで俺が目にしたものは屋根が吹き飛んで嫌になる程綺麗な星空がのぞいている天井。
元々会議室であったはずの場所は爆発で粉々になり、椅子の破片だと思われる金属がそこら中に散らばっている。
周りではまだ火が燃え続けていて、辺り一面に鼻をつくような火薬の匂いが蔓延していて、とても息ができるようなものではない。
動かない身体に鞭を打って無理やり立ち上がると、この悲惨な状況が現実であると嫌なほどに叩きつけられてしまった。
「おぉい、誰かいないか」
声をかけてみるも周りから一切の生気を感じられず、返事も返ってこない。
「なんでどうしてこうなったんだ。俺たちが一体何をしたって言うんだ」
この『アルビレオ』爆破テロ事件は、スタッフ 死者3人、重症者5人、行方不明者1人
キャスト 重症者1人、行方不明者1人という甚大な被害を出し、莫大な人気を誇っていた『アルビレオ』が解散するきっかけとなった。
俺はあの日を忘れない。忘れてなるものか。
あいつは、、、凪はきっと生きている。
俺はまた会える凪に会えるその時まで決して諦めない