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 突如として現れたエクリプスは、オルテンシアに笑いかけるでもなく、眼前の男達を睨んでいた。

 初めこそ驚いて不覚を取った男達も、すぐに体勢を整え、エクリプスに剣を向ける。

「何だてめぇ!」

 男たちは一斉にエクリプスに斬り掛かったがしかし、後数センチのところで、剣が止まる。まるでエクリプスの前に、見えない壁でもあるかのようだった。

 どの男達も、額に汗を浮かべて赤い顔をしながら剣を押し込もうとするが、剣は動かない。それで思い直して、一度離れてからもう一度斬り掛かっても、結果は同じだった。

「無駄です」

 エクリプスが呟くと、今度は男達の手から剣が離れ、エクリプスの元に集まった。魔力で操っているのか、空中で静止している。そして、剣は男達の方へ刃を向けた。更に、エクリプスが右手を一度天へ向けると、突然白い光の剣の様なものが現れ、剣同様に、男達へ刃を向ける。その数、数十本。

 それを見て、流石の男達も、みるみる顔が青ざめていった。

 エクリプスは天へ向けていた右手を、スッと正面に向けた。すると男達の剣と光の剣とが、まるで雨のように男達の頭上に降り注いだ。

「ギャアァ!!」

「うわぁ~!!」

 これには男達は逃げ惑うしかなく、一斉に来た道を駆け戻り、去っていった。

「……怪我はありませんか?」

 男達の気配が消えると、エクリプスはオルテンシアを振り返った。無事を確かめるように、オルテンシアの体のあちこちに視線を向ける。

「私は大丈夫だけど、キエルさんが…」

 オルテンシアが呟くと、「あ~あ。派手にやっちゃって…」と、面倒そうに言いながら、クリューが現れた。

「どれ、見せてみ」

 クリューはキエルの前にサッと屈むと、怪我の様子を確認し、自分の服の裾を破って包帯の代わりにキエルの腕に巻いた。

「これで止血はよし。あとは、オーガストに傷を塞いでもらえ」

「……ありがとうございます」

 キエルは落ち込んでいるのか、顔を伏せ、小さく呟いた。

「二人共、どうしてここに?」

 オルテンシアが言うと、クリューは大袈裟に溜息をついてみせた。

「私達は、エクリプスの成り立ちを知るために、エクリプスの生家に行っていたんだが、コイツときたら、急に血相を変えて小屋を飛び出して、ワープしやがったんだ。慌てて気配を追ったら、ここに着いた」

「ワープ?エクリプスが?」

 オルテンシアが目を見開くと、エクリプスはどこか神妙な顔をして頷いた。

「はい。急に胸騒ぎがして、これはオルテンシアに何かあったに違いないと思って、居ても立ってもいられず飛び出したのですが、まさか、ワープ出来るとは思ってもみませんでした……間に合って良かったです」

 そうしてエクリプスは、嬉しそうに笑った。その笑顔が、すごく懐かしく思えて、オルテンシアの目に涙が込み上げる。

「どうしました?どこか痛みますか?」

「……ううん。大丈夫。ちょっと、安心しただけ…」

「そうですか…」

 エクリプスは、少し屈んでオルテンシアと目線を合わせると、そっとオルテンシアの頭を撫でた。

「ったく……過保護だな」

 そんな様子を眺めては、クリューは面白く無さそうに呟いた。


 その後オーガストと合流し、クリューやエクリプスも一緒にカザンへと戻った。オーガストの治癒魔法によって、キエルの傷はすぐに塞がった。

「すみません。オルテンシアさんのことを頼まれていたのに…」

 キエルはひたすらに謝っていたが、「気にすんな!無事で何より」と、ジオーラは励ました。

 

 休ませる為キエルを家へと送った一行は、その後クリューの家へと飛んだ。

「何だか、懐かしい気がする!」

 オルテンシアが言うと、クリューは鼻を鳴らす。

「自分の家のように寛ぐな」

「僕には、我が家です〜!」

 モグが嬉しそうに言って、家の中でくるりと回った。

「ったく…呑気だな。おまえは…」

 クリューはそれで毒気を抜かれたように、表情を緩める。そして、一行に向き直った。

「エクリプスを人間に出来ないか試行錯誤していたが、なんとかなりそうだ」

「ん?エクリプスを人間にするには、素材を集めないといけないんじゃなかったか?」

 ジオーラが首を捻ると、「そのことですが…」とエクリプスが口を開き、特に素材は必要なさそうなこと、エクリプスに関するレシピは見つからず、今はエクリプスから魔力を抜き取る為の魔法陣を考えている最中ということを説明した。

「えー……」

 オルテンシアは脱力して座り込む。

「そんなぁ!じゃあ、なんで苦労してここまで…」

 オルテンシアと同じように、モグもへたり込んだ。

「まったくの無駄じゃないぞ。エクリプスには関係ないにしろ、使う用途のある素材だからな。今まで集めた分は、有り難く頂戴する」

 クリューは周りの非難の視線をものともせずに言ってのけると、「さて。偶然とはいえ揃ったことだし、素材集めは止めて、本題に移ろうか」と仕切り直した。

「どうやら真面目に素材を集めていたようだな。どれも簡単には手に入らないものばかりで大変だっただろう。その努力を認めて、私もエクリプスを人間にする方法を見つけるために尽力しよう。まずは、お前たちが居ない間に思いついた仮説を話す」

 クリューは、エクリプスの状況は、魔王の指が剣に封印されている状態ではないかということ、それ故に、魔王が倒れても存在が残ったかもしれないこと、魔王の指の力は強く、ただの剣では封印しきれないので、何らかのプラスエネルギーの強いもの(太陽や聖水のような、魔王と対極のエネルギー)を使ったであろうこと、よってエクリプスは、魔王の指、剣、プラスエネルギーの三つで構成されているようだと説明した。

「それで最初は、この三つを分離しようとしたんだが、魔王の指の魔力に跳ね返されて上手く行かなかった。それからは、魔力を吸収する方法も試したんだが、魔力量が多すぎて、魔法陣のほうがキャパオーバーになってしまって、今に至る」

 そこまで聞いて、オルテンシアはふと、違和感を覚えた。その違和感の元を考えて、唐突に閃いた。

「あの……悪魔封じの陣に入った状態で、分離か魔力吸収って出来ませんか?」

「!!」

 クリューは口をあんぐりと開けて、固まった。それはこちらが心配になるほど長く、「あの……クリュー様?」と、モグがクリューの服の裾を引っ張ってようやく動き出す始末だった。

「悔しいが、いいアイディアだ…」

 そう言ってはサッと自室に戻ってしまった。

「なんだい?ありゃあ…」

 ジオーラが呆れて言うと、モグは頭を掻いた。

「恐らく、新しい陣を考えに行ったのだと思います。こうなったら、完成するまで出て来なくなるので、僕らはお茶でもしながら、気長に待ちましょう。僕は、お茶の用意でもします」

 そう言ってモグは、台所に消えていった。


 それからは互いの苦労話に花を咲かせながら、夜は更けていき、その日はクリューの家に泊まることになった。

 いよいよエクリプスが人間になれるかもしれないとあって、皆が眠り始めた頃にも、オルテンシアは中々寝付けないでいた。ふとエクリプスの所在が気になって家の中を見渡すが、エクリプスはいない。それで気になって起き上がると、窓の外にエクリプスの姿を見つけた。庭に植えられた花を見ているようだ。オルテンシアは、そっと庭に出た。

「エクリプス」

 声を掛けると、エクリプスは弾かれたように振り返る。

「オルテンシア!……眠れませんでしたか?」

「うん……なんか、いよいよだなって思うと、緊張しちゃって…」

「まだ、明日にそうなると決まった訳ではないですよ」  

「そうだね。だけど、緊張する」

「ちゃんと休まないと、体に毒ですよ」

「うん。……エクリプスは、何してたの?」

「花壇の花を見ていました。種類によっては、夜にしか咲かない花もあるんですよ」

「へぇ~!」

 二人はしばし、並んで無言で花を眺める。確かにエクリプスの言うように、昼には蕾だった花が、咲いている。小ぶりながらも力強さを感じる花だった。

「……エクリプスはさ、人間になったら、何がしたい?」

「そうですね……まずは食事をしてみたいですね。"おいしい"という感覚がどんなものか、感じてみたいです」

「いいね!じゃあ、エクリプスが作ってくれるもので、私が特別好きなのを食べよう!」

「それは……私が作るのですか?」

「そうだよ。だって、私が作っても、エクリプスほど上手じゃないもん」

「そうですか。……でも、出来れば……オルテンシアが作ったものを食べてみたいです」

「…え?なんで?」

 驚いて問えば、エクリプスは少し考えるようにした。

「なぜ…と言われると難しいですが、オルテンシアが私の為に作ってくれるという感覚を、味わってみたい……かもしれません」

 オルテンシアは、返す言葉に困って押し黙る。

(時々、私だけ特別みたいな発言してくるの、止めて欲しい…)

 勘違いしてしまうから……。エクリプスは、自分は生き物ではないから、感情の機微が分からないとよく言っていたが、オルテンシアはそうではないと思っていた。むしろ、人と同じように感じて、考える力を持っている。けれど結局、生き物とは違うから、全ての感覚は共有出来ない……それが虚しいし辛いから、分からないことにして距離を置いているーーそういうふうに、オルテンシアには見えていた。けれど何故か、オルテンシアに対しては、より親密なりたいという感情が隠せていないようだった。

(ジオーラの言うように、伝えても、いいのかな…)

 エクリプスの感情が、ただ魔王を倒してくれたマスターだから特別という思いが強くて、オルテンシアのように恋と呼ばれるような感情じゃなかったとしても、それでオルテンシアの気持ちが変わるわけでも、エクリプスを嫌いになるわけでもない。"良き友人"という距離感に落ち着くには、かなり時間がかかるかもしれないが、きっといつか、エクリプスが笑って生きて居られるなら、それだけで満足と言える程大人になれるだろう。

(でも……こんなふうに言われたら…)

 まるで、ずっと一緒に居たいと言われているようで困る。ずっと一緒に居たら、友人という距離感を取ることは出来ない気がするし、かといって親や兄のように思うことも出来ない……。

(エクリプスにも、分かっていないんだろうけどね)

 ここはやはり、自分が大人になるしかないと、独りごちた。

「分かった!忘れなかったら、作ってあげるよ。……さぁて、そろそろ寝るかな」

 オルテンシアは気まずさを誤魔化すように話を切り上げて、大きく伸びをする。そのまま家の中に戻ろうと体の向きを変えるが、歩を進めることが出来なかった。エクリプスが、オルテンシアの手を掴んだからだ。

「エ、エクリプス?」

 驚いてエクリプスを振り返ると、エクリプスはハッとした様子で手を離した。

「……すみません。つい…」

「ううん!大丈夫。まだ、何か話したいことがあったの?」

「いえ。ーーただ……もう少し、一緒に居たいと思ってしまって……。しばらく離れていたからですかね。柄にもなく、寂しかったのかも……気にしないで下さい」

(エクリプスが……私と離れていたのが、寂しかった…?)

 心の中で反芻しながら、オルテンシアは自身の胸の鼓動が激しくなるのを感じた。息をするのも苦しくて、自然と浅く速い呼吸になる。

(そんなの、ずるい!……そんなことを言われたらーー)

「わ、私もっ!…私も……寂しかったよ。ずっと…」

 これ以上気持ちを抑えることが苦しくて、つい言ってしまう。頬は熱いし、目には涙も浮かんでいる。これ以上の言葉を紡いではいけないと思いながらも、一度開いた口は、オルテンシアの自制心を簡単に凌駕して、想いを語りだした。

「離れていると、エクリプスは今どうしてるかなって気になって、会いたくなって、苦しくなる……だって……だってエクリプスが、好きだからっ!」 

 エクリプスは目を大きく開いて固まっている。まだそんなことを言っているのかと、幻滅されただろうか?それとも、そんなことを言われるとは思っていなかったと驚いただろうか?

「ご、ごめん!変なこと言って……おやすみ!」

 いずれにせよ、エクリプスが次に発する言葉を聞くのが怖くて、オルテンシアは踵を返して、家に駆け戻ろうとした。しかし、再び腕を掴まれ、止められる。

「離し…ッ!?」

 エクリプスの腕を振り解こうとすると、エクリプスは腕を強く引いた。その予想外の強さに、オルテンシアはバランスを崩し、抵抗する間もなく、エクリプスの胸元に抱き寄せられてしまう。

「…エ、エクリプス?」

 なんとか顔を上げてエクリプスの顔を見ると、エクリプスは何かを堪えているような、または泣き出しそうな表情をしている。

「……私は生き物ではないので、貴女の気持ちに応えられないと、前にも言ったのに……まだ、そんな事を…」

 諭す様な口調にも関わらず、エクリプスは腕の力を緩めることなく、オルテンシアを抱いたままだった。

「……ごめん」

 オルテンシアが謝ると、エクリプスは軽く息を吐いた。

「ですが、私も貴女のことは言えないようです」

「…え?」

「貴女と同じです。離れていると心配で落ち着かなくなる……クリューさんには、"それは依存だ"と言われましたし、剣故にマスターに依存しているのだろうと言われました。それは良くないことだとも……けれど、貴女ほど入れ込んだマスターは、他に居ませんでした。ですからきっと、私も貴女に、マスターに対する以上の感情を持っているのだと思います。貴女の言葉を借りるなら……私も、貴女が好きだと言うことになります」

 そこでエクリプスは、オルテンシアをギュッと抱きしめた。

「貴女の事は誰よりも知っている気になっているし、貴女の事を守れるのは私だけだとも思ってしまう……正直なところ、ジオーラ達より、私を頼ってほしいと思ってしまったりします。やっぱり、依存しているのでしょうね…」

 エクリプスは、いつものようにオルテンシアの頭を優しく撫でる。けれど、いつもより丁寧に、気持ちを込めて撫でられているように感じた。

(なんだ……エクリプスも、同じだったんだ…)

 今までのエクリプスの振る舞いは、単に子どもを慈しむ、いわば大人の余裕から来るものだと思っていた。けれどそうではなく、ただ、オルテンシアが特別だったということだったのだろう。恐らく初めは、子どもの世話を妬いているつもりだったが、そのうち感情が変化した…ということなのかもしれない。

(依存…か……それを言うなら、私こそ、そうかもしれない…)

 他に誰かを好きになったことはない。両親が他界してからは一人だったし、生きるだけで精一杯だった。それがエクリプスという拠り所を見つけて安心した反面、エクリプスを失うのが怖くなった。また一人になりたくない……だからこそ、エクリプスが望む人間で居なくてはならないと思っていたのは事実だ。その執着を、恋と勘違いしただけかもしれない……。

「……依存なら、私もしているかもしれない。エクリプスが居なくなっちゃったらどうしようって、いつも思っていたから……こんなの、やっぱりダメかな……」

 誰に聞くともなく言うと、エクリプスはそっとオルテンシアから体を離す。それから屈んで、オルテンシアと目線を合わせた。

「駄目ではないと思いますよ。貴女は、もう少し我儘を言っても良いと思います」 

「わがまま?」

 問いながら、ジオーラにも同じことを言われたなと思い出す。

「はい。前までは貴女は私のマスターとして、勇者として戦わなければなりませんでしたが、今は違います。もう勇者の役目は終えました。貴女が私に、勇者の剣としてではなく、人間になりたいという願いを中心に生きて良いと言って下さったように、貴女も、自分の望む道を行けば良いのです。それに良いも悪いもありません。……貴女が今、一番望むものは何ですか?」

「……なんとなく思っているだけだけで、ジオーラにも似たようなことを言ったんだけどね……エクリプスとは、これからも一緒に居たい。ジオーラ達も仲間だし、一緒に旅をしたりしたいけど、たまに連絡を取るだけで、どこかに行ってしまうかもしれない……だけど、それは寂しいけど耐えられる。でも…でもね……エクリプスと離れるのは……嫌なの」

 まるで幼子の我儘のようだと、自分で言いながら呆れてしまう。自然と目線は、足元に向いた。そのまま黙ってしまうと、フッとエクリプスが笑う気配がした。

「そうですか。では、依存している者同士、飽きるまで一緒に居てみましょうか。そのうち、やりたいことが増えるかもしれません」

「いいの?」

 弾かれたように顔を上げると、エクリプスはいつものように微笑んでいた。

「私は貴女に無理をさせた分、貴女が幸せになるのを見届けたいと思っています。貴女が納得した人生を歩んで行けるまで、サポートします」

「……それ、エクリプスのやりたいことは、制限されない?」

「はい。私は今まで、魔王を倒すことしか頭にありませんでしたが、貴女のおかげで、使命を果たすことが出来て、魔王以外の事を考えられるようになりました。ただそれだけで、とても楽しいし、充実していると感じます。……上手く伝わっていないかもしれませんが、オルテンシアには、物凄く感謝しているのですよ。だから貴女には、誰よりも幸せになってほしいのです。それが今の私の願いです」

「……」

 オルテンシアは、何か言わなくてはと口を開いたが、言葉を発したら泣いてしまいそうで、慌てて口を噤んだ。"幸せになってほしい"と言う言葉が、何故だかとても印象深く、スッと心に入ってきた。

(ああ…そっか……)

 どうしてなのかと考えてみて、ふと、朧げに両親の顔が浮かんできた。両親を亡くしてからというもの、仲間達に出会うまで、誰かに身を案じてもらったり、幸運を願ってもらったことが無かったのだと実感する。それが、自分が思っていた以上に辛く、苦しかったと言うことも……。

「…ありがとう」

 やっとの思いで口にした言葉は結局震えてしまい、笑顔の頬には涙が伝う。

「よしよし」

 エクリプスはオルテンシアの頭を撫でる。

「…だから…子ども扱いしないでよ…」

 オルテンシアは泣きながら不服そうに口を尖らせたが、エクリプスはどこか楽しそうに笑ったままだった。

「そうは言われても、まだ子どもでしょう?貴女が居た国でも、成人は十八歳だった筈です」

「……もうすぐ十五だもん」

「あと三年はありますね」

「……エクリプスの、いじわる…」

「フフ…別に馬鹿にはしていませんよ。ただ愛らしいと思っているだけです。子どもはすぐに大人になりたがりますが、人が子どもである時期は短い……せっかくだから、楽しめば良いと思うのですけどね。今は庇護者もいる訳ですし」

「そうかもしれないけど……」

 (やっぱり、エクリプスからしたら、私は保護対象なんだな…)

 エクリプスに守られるのではなくて、隣に立ちたいと思ってしまうオルテンシアは、複雑な気分だった。これでは恋人なんて、夢のまた夢だ。

「さて。そろそろ寝ないと、明日に響きますよ。一緒に家に戻りましょう」

 エクリプスに促され、オルテンシアはクリューの家の中に戻る。見守られながら横になって毛布に包まると、目を閉じた。

(ジオーラは大丈夫だって言ってくれるけど……同じ気持ちのようで、なんか違うんだよな……でも、エクリプスもよく分かってなさそうだったし、無自覚でしていることも多いのかな?)

 側にエクリプスの気配を感じながら、オルテンシアはそんなことを思った。

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